著者
渡辺 建彦 目黒 謙一 谷内 一彦 一ノ瀬 正和 小野寺 憲治 前山 一隆
出版者
東北大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

ヒスタミンH3受容体は、中枢ヒスタミン神経系のシナプス前部に存在するオートレセプターで、ヒスタミンの遊離、合成を調節している。最近、末梢にも、また、他の神経系にも存在するといわれている。本研究では、ヒスタミンと関連する病態として喘息と痴呆をとりあげ、H3リガンドのこれらの疾患モデル動物での効果を検討した。まづ、老化促進モデルマウスを用いて、シャトルボックス法で学習・記憶能を評価した。異常老化系(P/8)は、正常老化系(R/1)に比して、学習獲得が遅かったが、H3アンタゴニスト、チオペラミドの投与で、R/1マウスと同じレベルまで改善した。しかし、R/1マウスの学習能が更によくなることはなかった。スコポラミン投与によりアセチルコリン系を障害した痴呆モデル・マウスにおいても、elevated plus maze testで評価したところ、チオペラミド投与が改善を示した。種々の喘息モデルに対するH3作動薬(R)-α-メチルヒスタミン、イミテットの効果を検討したが、明確な効果は得られなかった。より適したモデル系の確立が必要である。新規H3アンタゴニスト、AQ0145(ミドリ十字社)は、マウスの電撃痙攣に対する抑制作用においてチオペラミドとほぼ同程度であった。6-ヒドロキシドパミンをラットの片側線条体に注入する除神経において、障害側の線条体と黒質ではヒスタミンH3受容体の密度は上昇した。この上昇は、ドパミンD1アゴニスト、SKF38393処置で対側レベルまで低下したが、D2アゴニスト、キンピロールは影響しなかった。即ち、ドパミン神経系の障害に伴う神経可塑性において、D1受容体を介してヒスタミンH3受容体のアップ・レギュレーションが制御されていることが判明した。チオペラミド、(R)αメチルヒスタミンのラットにおける体内動態を検討したが、いずれも脳への移行性がわるいことが判明した。本研究の過程で、H3アンタゴニストに抗痙攣作用が有ることが判明し、今後に期待を抱かせた。結論として、H3アンタゴニストは、てんかん、痴呆の薬物となりうることが示された。そのためには、なお一層の基礎的知見の集積が必要である。

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@poco_adhd あ、 ちょっと気になったからhttps://t.co/Pwkkh03tc2 喘息の人多いなってイメージあったけどこれなら説明つくよねー。

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