- 著者
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坂田 利家
吉松 博信
桶田 俊光
渡辺 建彦
- 出版者
- 大分医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1995
糖尿病および肥満糖尿病における代謝異常が脳機能にどのように影響するかを神経ヒスタミン系を指標として解析し、以下の結果が判明した。1)糖尿病モデル動物であるSTZ糖尿病ラットおよびZucker obese ratでは神経ヒスタミンが低下していた。2)レプチンは視床下部神経ヒスタミンの代謝回転を増加させた。3)レプチンの摂食抑制作用は神経ヒスタミンの枯渇化によって減弱した。レプチンの摂食抑制作用の約50%は神経ヒスタミンによって調節されていることが判明した。4)レプチン受容体に異常のあるdb/dbマウス、それにob遺伝子異常によりレプチンが欠如しているob/obマウスでは視床下部ヒスタミンおよびtMH含量が低下していた。Zucker obese ratと同様にレプチンによる神経ヒスタミンの賦活化作用が脱落した結果と考えられた。5)食事誘導性ラットでは体重増加が少ない早期から内臓脂肪蓄積が認められ、血漿中性脂肪値が増加していた。血糖値、インスリン値は後期に上昇し、インスリン抵抗性の出現が脂肪代謝異常に遅れて出現することを示唆している。血中レプチンは肥満早期に増加し、肥満発症後期にも増加していた。6)摂食抑制性の神経ペプチドであるCRHはヒスタミン神経系を賦活化した。摂食促進性のNPYは神経ヒスタミンには影響しなかった。インスリン抵抗性発症因子であるTNF-αも神経ヒスタミンには影響しなかった。7)神経ヒスタミンは脳のGLUT1 mRNA発現を促進した。飢餓状態での脳のGLUT1の発現亢進には神経ヒスタミンが関与していた。8)神経ヒスタミンは中枢性にインスリン分泌を制御していた。9)神経ヒスタミンは中枢性に脂肪組織の脂肪代謝を制御する作用を示した。その作用様式は脂肪分解の亢進と脂肪合成系のACS mRNAとGLUT4 mRNAの発現制御によっていた。神経ヒスタミンの脂肪分解作用は脂肪組織に分枝している交感神経活動促進作用によっていた。10)ヒスタミンの基質であるヒスチジンの投与で神経ヒスタミンの代謝回転とHDC活性が亢進した。ヒスチジンの末梢および脳室内投与で摂食抑制が観察された。ヒスチジンの末梢投与で交感神経系を介した脂肪分解反応が促進された。11)遊離脂肪酸のオレイン酸はヒスタミン系を促進することが示唆された。12)神経ヒスタミンは学習機能に促進的に作用した。糖尿病状態でのヒスタミン機能低下が学習機能低下につながる可能性が示された。以上、糖尿病でみられる脳機能異常の可能性について神経ヒスタミンを指標に解析し、神経ヒスタミンの動態には血糖値、インスリン値だけでなく、レプチンやアミノ酸、脂肪酸など種々の代謝成分が関与していることが判明した。またそれらの情報を受けたヒスタミン神経系は食行動を調節するだけでなく、脳内の糖代謝や自律神経系を介する末梢の脂肪代謝調節に積極的に関与していることも明らかになった。