著者
小谷 昌司
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

脂肪酸結合蛋白は長鎖脂肪酸の細胞内転送に関わるものと考えられているが、この蛋白質が等電点電気泳動などで多数の分子種に分離されることから、翻訳後の修飾が多型の原因となっているとともに、これが機能と密接な関係にあること予想された。我々はラット肝脂肪酸結合蛋白について、今回アラキドン酸を特異的に結合しているもっとも酸性な分子種は、アスパラギン105がイソアスパラギン酸となった新規の修飾であることを構造解析の結果同定した。また、この修飾をうけた蛋白質のリガンド結合能・プロテアーゼ感受性などの機能変化を検討し、その生理的意義の解明とこの翻訳後修飾反応に関わる細胞内因子の検索をおこなった。まず、試験管内でのイソアスパラギン酸の生成を試み、0.5M炭酸ナトリウム緩衝液中で保温するとイソアスパラギン酸105をもつ分子種が高収率で生成することがわかった。蛋白質の内部で生じるこのイソアスパラギン酸結合の検出のためメチル化とLiBH_4による還元でこれをイソホモセリンとして同定する方法を考案し、さらに、PTC化による高感度化を検討し一定の成果をえた。また、この蛋白質を細胞内因子検索のための基質とするため抗体を作成し、等電点電気泳動とウェスタンブロットの組み合わせによる検出方法を確立した。また脂肪酸をはずした蛋白質を炭酸イオン存在下で保温すると別の酸性の分子種が定量的に生成することが観察された。この分子種を分取し構造解析した結果、N末端から2番目のアスパラギンが脱アミドしたものであることが明らかになり、リガンド結合と脱アミド反応との関連を示唆する結果を得た。一方、ラット肝脂肪酸結合蛋白のシステイン69に遊離のシステインが混合ジスルフィドを形成した新しい分子種を見いだし、機能の解析を行った。また、ラット皮膚から新規に単離した脂肪酸結合蛋白質は分子内に5個の半シスチン残基をもつこれまでに見られないものでSS結合と脂肪酸結合能との関連を検討した。

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