著者
清水 則夫
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

バ-キットリンバ腫由来Akata細胞は、細胞表面に発現する抗体を抗Ig抗体でクロスリンクする(抗体処理)と潜伏EBウイルスの活性化が起き、ウイルス産生が誘導される。この抗体処理によるシグナル伝達の遮断に働いているEBV抗原の同定をするために、亜鉛イオンにより発現誘導可能なメタロチオネインプロモーターの下流へ、潜伏感染状態で発現する9種類のウイルス抗原の遺伝子をそれぞれ挿入した発現プラスミドを作成した。得られたそれぞれのプラスミドと薬剤抵抗性プラスミドをAkata細胞へ同時に導入し、薬剤選択により両方のプラスミドDNAを保持するクローンを選択した。さらに得られたクローンから、亜鉛処理によりウイルス抗原の発現誘導が起こる細胞クローンを蛍光抗体法により選択した。得られた細胞クローンを12時間亜鉛処理してウイルス抗原の発現を誘導し、亜鉛を除いた後、抗Ig抗体を加えてさらに12時間培養し、どのウイルス抗原誘導でウイルス産生が起こらなくなるのかを蛍光抗体法で調べた。その結果、LMP1を発現している細胞クローンでは、潜伏感染しているEBウイルスの活性化が抑制されることが明らかとなった。この結果は、従来から我々が得ていた結果と矛盾しない。しかし、用いた細胞クローンでは、亜鉛処理によりLMP1の発現は、通常のEBウイルス陽性細胞で発現する量より数倍程度多く発現していた。LMP1は大量に発現すると細胞毒性があることが知られているため、得られた結果がLMP1による細胞毒性を反映していることを否定できない。現在、LMP1の発現量を通常のEBウイルス陽性細胞と同等なレベルにまで落とすための亜鉛処理の条件を検討中である。

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