著者
久塚 純一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

地域で、実際に計画策定を担当している者が、計画策定や地域特性に対してのアイデンティティーを持てる条件が備わっていることが「策定された計画についての満足度」と深く関わり、したがって、「マニュアル」や「指針」の存在や国からの指導は、かえって、地域特性を反映した計画に結実しないとの仮説のもとに、「福岡県」・「佐賀県」・「熊本県」・「兵庫県」・「神奈川県」と五県内の全市町村、および関係団体について、アンケート調査とヒアリングを実施した。アンケート調査の結果については、(1)策定された計画についての満足度と、(2)アンケートに回答した担当者が、評価を下す際に「自己責任」という観点から回答を導き出したか、「他者責任」という観点から回答を導き出したかをクロスさせ解析した。その理由は、コミュニティーケア自体が、「普遍性」と「個別性=地域特性」という二つの価値軸を持っているからである。仮説の通り、(1)「策定された計画についての満足度」と(2)「地域に対してのアイデンティティー」や「実感としての主体性発揮」の有無が密接に関係していることが分かった。地域を比較すると、「福岡県」と「兵庫県」に類似した傾向が見られる。同様のことは、介護保険導入後の市町村の実施計画作成についても想像できることから、今後とも、計画作りの「マニュアル」や「指針」と、計画作りにおける「自由度」や「地域特性の重視」との関係は大きな課題となろう。いずれにしろ、地域で、具体的に計画策定を担当する市町村職員の「ローカルなものに対するアイデンティティーの確保」が重要な鍵を握っているものと考えられる。

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