著者
牧 雅之
出版者
福岡教育大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

1.雌性両性花異株であるカワラナデシコの関東・中部地方の7集団について、両性個体の自家交配率を複数の酵素多型遺伝子座を用いた多重遺伝視座推定法で推定した。調査対象とした集団の雌性個体の頻度は約5%から約50%までの大きな変異を示していた。2.カワラナデシコの両性個体は雄性先熟であるため、自家交配は起きにくいと予測されたが、ある程度の割合で自家交配が起きているこが確認された。この理由としては、同花受粉が起きている可能性と隣花受粉が起きている可能性の両方が考えられる。カワラナデシコは、最盛期には同一個体内で複数の花が同時に咲き、訪花昆虫は位置的に近い花を順々に訪れる傾向があるため隣家受粉が起こりうる。また、雄性先熟ではあるが、袋かけをして、訪花昆虫を排除してやっても、種子を生産しうるので、同花受粉も可能である。どちらの受粉様式が自家交配の主な要因となっているかは今後の課題である。3.集団における雌性個体の頻度と両性個体の自家交配率との間には、強いとはいえないものの、相関関係が見られた。これは近交弱勢や両性型間での種子生産量には集団間で大きい違いがないものと仮定すれば、理論的に予測される結果と一致する。今後、近交弱勢や種子生産量の相対比の集団間の違いがどの程度であるかを推定する必要がある。

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