著者
中村 誠宏
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

苫小牧研究林のクレーンサイトにおいて地上15-20mにある枝(地上部)の温暖化処理を2008年5月から本格的に開始した。その結果、温暖化処理は、地区部処理区、地下部+地上部処理区、対象区の3つのタイプが揃った。それぞれの温暖化処理区において、このまま温暖化が続いた場合の100年後の気温を想定して5度の温度上昇を維持するための装置も設置してある。この電熱ケーブルを枝に張り巡らす地上部の温暖化処理は世界でも例を見ない手法である。以上の実験環境の整備により、北海道の代表的なミズナラ自然林を舞台に、人工的な温暖化現象を作り出し、樹木にどのような変化が現れるのかを長期的に調べることが可能な状態になった。本年度の温暖化処理区での調査は、昨年に引き続き林冠部の葉形質と食害度の調査を行った。さらに、葉の光合成と呼吸量の測定も行った。温暖化の処理効果を近接リモートセンシングで把握できるようにクレーンの上部に分光カメラと熱カメラを設置して林冠部の撮影によるモニタリングを開始した。一方、林床植物の群集構造そして繁殖戦略についての調査を開始した。土壌の温暖化を直接大きな影響を受けているのは林床植物群集であると考えている。今年度の主な結果は、ドングリ生産量が枝の地上部(枝)の温暖化処理によって2-5倍に増加したことである。また、秋の落葉も10日ほど遅くなり、地上部の温暖化は樹木の様々な生態的な特徴に影響を与えていることがわかってきた。また、樹木の生理機能に関しては、土壌の温暖化処理によって春先の葉の呼吸量が増加することがわかった。しかし、地上部の温暖化処理はこれら機能への影響は見られなかった。

言及状況

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こんな研究ありました:地球温暖化に対する北方森林生態系の反応:電熱線を使った野外操作実験による検証(中村 誠宏) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/07J05387

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