著者
岩見 真吾
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

私は、これまで応用数学者という立場で、医学研究者と連携して、日本ではほとんど行われてこなかった「感染症および難治疾患の数理研究」という数学的に高い意義を持ち、かつ社会貢献を重視した研究に従事してきました。例えば、感染実験と数理モデルを用いて、AIDS発症機構を解明し、ワクチン開発戦略の提案に関する研究を行っている。本年度は、京都大学ウイルス研究所の三浦智行准教授との共同研究を積極的に行った。特に、アカゲザルへのHIVの感染実験結果をもとに、AIDS発症機構や感染防御機構の全貌を明らかにするHIVの病原性評価理論を作った。この理論は、HIVの増殖率と感染力の組み合わせによる、HIV抑制とAIDS発症を予想するものである。これらの理論を足掛りに、HIV増殖を効率よく抑制するワクチン開発戦略を明らかにすることができると考えている。さらに、新型インフルエンザの流行予測と政策評価に関する研究も行った。数学解析と数値計算を駆使し、防御政策に伴うリスクを見つけ出してきた。リスクを知ることで、安全かつ効率よく流行を抑え込む政策を提案できるからである。実際に、オランダで流行した鳥インフルエンザの疫学データをもとに、家禽に対するワクチン政策の有効性を評価すると、ワクチン接種率の増加に伴い感染鳥数が増加する可能性があることがわかった。これは、ワクチン接種が流行を助長する恐れがあることを示している。本研究は、静岡・中日新聞に掲載され、世間から注目を集めた。

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

収集済み URL リスト