著者
萬代 忠勝 忍足 鉄太
出版者
倉敷芸術科学大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

タキソ-ルは水への溶解度が極めて低いため、点滴として使うためには可溶化剤の使用が不可欠であること、またその可溶化剤の副作用が問題であることなど、克服すべき課題は多い。タキソ-ルの水溶性を上げる手法として、水酸基に糖を連結する方法が考えられる。しかし、一般的な配糖化法では糖の1位の水酸基を他の官能基に変換して活性化しなければならないうえに、各種のルイス酸を使用する必要がある。ルイス酸を使うことによって、酸に不安定なオキセタン骨格が開裂したり、バッカチン骨格の転位等が起こる恐れがあることから直接的な配糖化法を回避し、タキソ-ルの水酸基をエステル化することによって糖を連結する新規配糖化法を採用することとした。糖を有するグリコール酸(アシル化剤)は短工程で収率良く調製できる。グルコースの他に、ガラクトース、マンノース、キシロースからも同様のアシル化剤を調製した。つぎにエステル化でパクリタクセルの7位に連結することによって7-GLG-PT,7-GAG-PT,7-MAG-PT、7-XYG-PTを合成した。また、側鎖の2′位にグルコース由来のアシル化剤を連結した2′-GLG-PT,2′,7-GLG-PTも合成した。いずれのタキソ-ル誘導体の水溶性は、タキソ-ルを上回る結果を示した。特に、7-MAG-PTはタキソ-ルに比べて260倍の水溶性を示すことが判った。

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