著者
草野 圭弘 福原 実 高田 潤 岡田 輝雄
出版者
倉敷芸術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

金属光沢を有する備前焼および施釉陶器について、模様構成相と微構造を検討した。金属光沢を有する備前焼表面には、厚さ~100nmのヘマタイト(アルファ型酸化鉄、α-Fe2O3)粒子が主に観察された。金属光沢を有する施釉陶器の釉薬表面にも、厚さ~60nmのヘマタイトが生成していることがわかった。これらの金属光沢模様の形成には、冷却時の雰囲気と速度が重要であることがわかった。
著者
草野 圭弘 福原 実 高田 潤
出版者
倉敷芸術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

備前焼作家により制作された金彩備前焼について、表層の結晶相について粉末X線回折および透過型電子顕微鏡観察により検討した。金色は、これまで燃料として用いられる赤松に含まれる炭素が作品表面に付着し、この炭素膜による干渉色によると考えられてきたが、炭素は検出されず、厚さが約100nmの酸化鉄(ヘマタイト、α-Fe2O3)が表面に生成していることが明らかとなった。また、メスバウアー分光測定においても、ヘマタイトの生成を確認した。このヘマタイトとガラス相の散乱光により金色に見える可能性があることがわかった。金彩および銀彩備前焼を制作されている備前焼作家に、金属光沢模様が現れやすい焼成条件について聞き取り調査を行った。稲わらを巻いた作品を登り窯にて酸化雰囲気下で昇温した後、過剰の薪または炭を加え、還元雰囲気下で冷却すると金彩や銀彩模様が現れやすいことがわかった。よって、備前焼表面の金属光沢は、稲わらと反応して生成した液相中に酸化鉄が析出することにより現れると考えられた。作家による焼成条件を基に、電気炉にて再現実験を行った。稲わらの主成分はシリカ(SiO2)であるが、カリウムが約13wt%含まれており、カリウムが備前焼粘土と反応してガラス相が形成すると考えられる。そこで、稲わらの代わりに炭酸カリウム(K2CO3)を用い、大気中にて1230℃まで昇温後、アルゴンガスに一酸化炭素を10%混合したガス中で冷却を行った。現在、生成相の検討および熱処理条件の最適化を行っている。
著者
山嵜 宏暉
出版者
倉敷芸術科学大学
雑誌
倉敷芸術科学大学紀要 (ISSN:13443623)
巻号頁・発行日
no.7, pp.221-232, 2002
著者
萬代 忠勝 忍足 鉄太
出版者
倉敷芸術科学大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

タキソ-ルは水への溶解度が極めて低いため、点滴として使うためには可溶化剤の使用が不可欠であること、またその可溶化剤の副作用が問題であることなど、克服すべき課題は多い。タキソ-ルの水溶性を上げる手法として、水酸基に糖を連結する方法が考えられる。しかし、一般的な配糖化法では糖の1位の水酸基を他の官能基に変換して活性化しなければならないうえに、各種のルイス酸を使用する必要がある。ルイス酸を使うことによって、酸に不安定なオキセタン骨格が開裂したり、バッカチン骨格の転位等が起こる恐れがあることから直接的な配糖化法を回避し、タキソ-ルの水酸基をエステル化することによって糖を連結する新規配糖化法を採用することとした。糖を有するグリコール酸(アシル化剤)は短工程で収率良く調製できる。グルコースの他に、ガラクトース、マンノース、キシロースからも同様のアシル化剤を調製した。つぎにエステル化でパクリタクセルの7位に連結することによって7-GLG-PT,7-GAG-PT,7-MAG-PT、7-XYG-PTを合成した。また、側鎖の2′位にグルコース由来のアシル化剤を連結した2′-GLG-PT,2′,7-GLG-PTも合成した。いずれのタキソ-ル誘導体の水溶性は、タキソ-ルを上回る結果を示した。特に、7-MAG-PTはタキソ-ルに比べて260倍の水溶性を示すことが判った。
著者
小林 久芳
出版者
倉敷芸術科学大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

今年度の課題研究では、ペロブスカイト系触媒の特性を解明し、今後の実験サイドでの発展をサポートするため、多くの系について電子構造を系統的に研究した。ペロブスカイトとは狭義にはCaTiO_3のことであるが一般にABO_3という組成をもつ化合物群の総称である。種々の結晶系をとるが、正方晶系、立方晶系のものが多い。代表的なペロブスカイトであるSrTiO_3の単位胞を図1に示す。一般にAサイトのイオン(単位胞の頂点)は酸化還元電位に関係するが化学的には不活性であり、Bサイトのイオン(単位胞の中心)が反応性を決めている。BaTiO_3およびTiO_2の電子構造の計算によりバンドキャップはそれぞれ、1.7、1.9eVと計算されたBaTiO_3では7個のバンドが示されており、そのうち6個が原子価バンドである。これらのバンドの構成成分は、低エネルギー側から、Ti 3s、Ti 4p、Ba 5s、O 2s、Ba 5p、O 2pである。伝道バンドはTi3d+4sにO2p軌道が混ざったものである。SrTiO_3のバンド構成でも触れたが、これらの酸化物の最高被占原子価バンドは酸素の2p軌道を主成分として構成されている。通常、O2p軌道とO2s軌道は混成せず、後者は低エネルギー側に別のバンドを形成する。ペロブスカイト系の特徴は、O 2pバンドとO 2sバンドの中間にAサイト原子に由来するバンド(Sr 4p軌道あるいはBa 5p軌道)が形成されることである。また、SrTiO_3とBaTiO_3の比較では、Ba由来のバンドは、Sr由来のバンドに比べて、高エネルギー側に現われる。これは軌道がより広がり、軌道エネルギーが高くなったことに対応している。