著者
伊藤 正裕
出版者
香川医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

発育期にある各週令マウスの精巣マクロファージの分布をマウス抗マクロファージ抗体を用いて免疫組織学的に検索すると、新生マウスの精巣で既にマクロファージはその間質に認められるものの、その数は少なく直精細管周囲に集中する局在は認められなかった。このマクロファージの直精細管を取り巻く局在性は3週令マウス精巣より観察された。これは自己免疫源性抗原を持つ精子細胞の出現時期とほぼ一致していた。しかしここを中心に始まる自己免疫性精巣炎におけるリンパ球浸潤は6週令マウスからは認められたものの、それより若いマウスでは認めることはできなかった。抗精巣細胞抗体とその細胞に対する遅延型過敏反応は3週令から5週令までは成獣マウスのそれと比べて有意に低いことがわかった。これは精巣内マクロファージ集中の局在性が3週令から認められるものの、精巣を取り巻く免疫環境により、リンパ球が浸潤しにくいことを示唆している。成獣マウスの精巣炎における内分泌反応の変化は、血清テストステロンは明らかな減少を示さず中には正常よりも高値を示すものも認められた。血清LHも有意な変化を示さなかったが、血清FSHはどのマウスも高値を示した。これは精細管上皮は障害を受けるもののリンパ球浸潤の最も厳しい間質においLEYDIG細胞及びそのテストステロン分泌能は比較的保たれていることが考えられた。過去の研究でマクロファージとLEYDIG細胞のCELL-CELL INTERACTIONがテストステロンの分泌に重要であると報告が多い。実際に様々なサイトカインを分泌するリンパ球が浸潤し精巣マクロファージにも何らかの機能変化があったと推察され、これが一部のマウスにおいてLEYDIG細胞を刺激して高テストステロン状態を誘導したことも考えられる。

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