著者
林 真紀夫
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、挿し木(挿し芽)苗生産における、根・シュートの分化および成長促進のための環境調節法について、光合成量促進の観点から検討した。根・シュートの分化および成長には炭水化物を必要とし、そのため光合成速度を高めることが、挿し木(挿し芽)の成長促進をもたらすと予想されたからである。そこで、一般に栄養繁殖されている植物として、木本性のバラと草本性のキクを供試し、CO_2濃度の異なる条件下で挿し木(挿し芽)を生育させ、CO_2濃度が根の成長に及ぼす影響について、発根促進剤処理の有無との関係で試験した。また、光合成量に影響すると考えられる、挿し穂葉面積と根の成長の関係についても試験した。試験結果概要は以下の通りである。1.CO_2施用と根部の生育CO_2濃度の異なる試験区を設け、生育試験を行った結果では、バラおよびキクともに、挿し木(挿し芽)30日目の根部の重量は、CO_2施用区が無施用区の1.4〜2.0倍となり、CO_2施用により根の重量増加が促進されることが確認された。2.CO_2施用とシュートの生育CO_2施用は、バラおよびキクともに、シュートに対して、根部ほどではないが成長促進効果があることが認められた。3.挿し穂葉面積(小葉枚数)の影響バラを供試して、挿し穂の小葉枚数の影響をみた試験では、挿し穂小葉枚数(葉面積)が増えると、根部の成長は多少促進されるが、シュート成長はむしろ抑制されることが示された。4.発根促進剤の効果発根促進剤処理の有無とCO_2施用の有無を組み合わせた生育試験から、発根促進剤処理によって根部の成長は促進されたが、シュート成長はかなり抑制されることが示された。しかし、CO_2施用を組み合わせることによって、シュート成長の抑制は減少した。以上の結果から、根およびシュート両方の分化および成長にとって、CO_2施用が効果的な環境調節手段であると考えられた。

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