著者
グレーヴァ 香子 グレーヴァ ヘンリク 赤林 英夫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、ゲーム理論を主な道具として用い、労働者、企業は共に戦略的に行動しているという角度から労働の需給がどのように決まるのか、その結果としての賃金分布、就職/転職率労働供給量の性質などを、理論、実証の両面から分析することであった。1年目は労働者、企業がともに長期的利得を最大化するように行動し、しかも労働者は企業の行動を完全には知らないため、企業の評判が均衡に影響するというゲームモデルを構築してその均衡の性質を分析した。これと平行して日本の労働の特殊問題である配偶者控除制度に影響さる女性の労働問題についても考察した。また、実証分析の準備のためアメリカと日本の労働者行動のデータを収集、整理した。2年目は理論モデルの実証を主に、また理論モデルの発展についても研究を行った。理論分析の結果、労働者の転職行動は現時点での賃金だけに左右されるのでなく、労働者が予想する各企業の将来賃金、労働者の家庭状況や税制などにも依存することが考えられた。そこで、労働者が抱く将来賃金の期待は大企業ほど高いという『評判』モデルをアメリカのデータで検証し、理論の結論を支持する結果を得たまた、女性の労働供給は家庭状況や夫の所得控除といった税制に影響されていることも実証されたこの結果、労働供給は戦略的に行われていることが明確になり、これまでの価格理論的考え方(労働は賃金という価格により需給調整される財である)に一石を投じることができた。また、ゲーム理論の観点からも将来の予測がゲームへ参加するかどうかを左右するという新しいモデルとその応用を提供した

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何故かふと不動点定理が脳裏によぎって、転職市場でのゲーム理論が気になった

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