著者
西園 晃 中島 一敏 山城 哲
出版者
大分医科大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2001

ヘリコバクター・ピロリ菌の外膜蛋白Omp29のN末端アミノ酸配列を決定し、Omp29遺伝子の分離株間での多様性と発現蛋白の抗原性について検討することを今回の目的とした。分離・精製された分子量29KDaの蛋白分画のN末端アミノ酸配列は26695株のHP78及びJ99株のJHP73遺伝子のN末端配列と同一であった。臨床分離株150例から抽出したDNAをPCRを用いて検討した結果、増幅産物は長さにより770bp、770bp以上の2群に分類され150例5例と76例であった。Omp29遺伝子の構造について短い770bp群は互いにほぼ同じ配列であったのに対し、長いサイズ群は保存された配列の間に5'末端から180bpの位置に、762bp〜1264bpと種々の長さで保存性の低い配列が挿入された構造となっていた。挿入された異なる配列の5'及び3'末端には17bpから成る同方向配列が各々確認された。また各遺伝子のORF構造は770bp群では単一ORFであるのに対し、長いサイズ群では数個のORFに分断されていた。組み換えOmp29蛋白に対するウサギ抗血清を用いたimmunoblotでは、単一のORFから成る770bp群では29kDaの位置に反応が見られたが、長いサイズ群ではORFが分断されているために反応は認めなかった。一方、Omp29発現蛋白を抗原として患者血清中の抗体保有の有無を確認したところ、全ての患者に29kDaの反応物を確認できた。Omp29遺伝子配列中には、2箇所の17bpから成る繰り返し配列が存在し、この間に挿入された塩基配列の長さの違いでゲノム全体の長さが変化するような新規の挿入・脱落機序が存在する事が予想された。このようなメカニズムによりH.pyloriゲノムの変異から、抗原性の変化、さらには宿主の免疫監視機構からの回避により持続感染に至ることが予想された。

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