著者
古丸 明 河村 功一 後藤 太一郎 西田 睦
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

利根川河口域ヤマトシジミ漁場において、外来雄性発生種タイワンシジミCorbicula flumineaと両性生殖種ウスシジミCorbicula papyracea両種が分布していることが明らかになった。また、タイワンシジミは利根川だけでなく、幅広く日本の淡水域に見いだされた。両種の繁殖、遺伝に関する新知見が多く得られた。成果は以下の項目に集約できる。1)利根川で採集されたタイワンシジミは雌雄同体で卵胎生であった。ウスシジミは雌雄異体であった。2)タイワンシジミにおいて精子は減数しておらず、体細胞と同じDNA量を示した。3)タイワンシジミ受精卵の細胞遺伝学的な視察により、雄性発生過程を明らかにすることができた。第一分裂時にすべての卵由来の染色体が2個とも極体として放出された。その結果、卵内には雄性前核が一個のみ存在する状態となり、第一卵割期以降、精子由来染色体で発生が進んだ。4)利根川における移入種のなかに雄性発生タイワンシジミ2タイプが含まれていた。両タイプとも受精卵の発生過程の観察から雄性発生していることが明らかになった。5)雌雄異体種はウスシジミと判断された。ウスシジミとヤマトシジミの交配実験の結果、受精は正常に進行し、ベリジャー幼生までは発生することがわかった。産卵期や分布域が重複しており、両者の交雑がおこることが示唆された。6)ミトコンドリア遺伝子の塩基配列から、外来種と日本産のシジミの系統類縁関係を推定した。シジミ類は汽水種(ヤマトシジミ、ウスシジミ)と淡水種(タイワンシジミ、マシジミ、セタシジミ)の2つのグループにわけられた。淡水種において別種と判断された場合でも、塩基配列はほぼ一致する場合もあった。一方、ウスシジミは塩基配列から、韓国産である可能性が高いことがわかった。以上の結果から、利根川ヤマトシジミ漁場においてタイワンシジミ、ウスシジミが侵入しており、両種は餌、生息場所が完全にヤマトシジミと競合することは明かである。これらの種がヤマトシジミ資源に生態的に、遺伝的に悪影響を与える可能性が示された。

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@koseitanago @saichuta https://t.co/a0CFBQ8FNW こちらを読むと、ヤマトシジミとの交雑可能性も示唆されています。

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