著者
河村 満
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

音楽には、言語と同様に表出(歌う・演奏する)、受容(聞く)、(楽譜を)読む、(楽譜を)書く過程がある。音楽の表出・受容の脳内機構についてはいくつかの知見が蓄積されているが、(楽譜の)読み書きについての検討は極めて少ない。そこで、本研究では、脳病変例を対象に、楽譜の読み書きの脳内機構を明らかにすることを目的とした。われわれは2000年に、左上頭頂小葉の皮質・皮質下病変によって、楽譜の読みに障害がないが、楽譜の書きにのみ障害が認められたピアノ教師を報告した。この症例では文字の書きの障害も伴わなかったことから、楽譜の書きが文字の書きとは独立した過程である事を明らかにした。さらに、この症例の特徴はリズム表記の障害であったことから、音高の表記とリズムの表記は独立した過程であることを示唆した。さらに同年、上記症例とは逆のパターンを示したトロンボーン奏者を記載した。この症例は左角回に限局性の病変で、音高の表記のみに障害を示していた。本研究では、これらの結果を基底にして、ウェルニッケ失語を呈したピアノ教師例を検討した。この症例では、楽譜を読む際の障害はピッチにのみみられリズムでは障害がみられなかった。この結果は楽譜の読み書きにおいて、リズム認知機能とピッチ認知機能とがそれぞれ異なった脳内機構をもつことを明示している。さらにパーキンソン病を対象にして、リズム認知機脳を検討し、本病でリズム認知機能障害がみられることを示した。これは大脳基定核にリズム語知機能があることを示唆している。

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