著者
土原 和子
出版者
国立研究開発法人 森林総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

・昨年度タンニンとの結合を確認した候補タンパク質のうちN末端がブロックされていた3種タンパク質の構造決定する為に酵素消化して解析した。酵素で切断して質量分析(MARDI-TOF-MASS)をおこなったところ、3種類とも全く別の解析パターンを示したが、タンニン結合性候補タンパク質Proline Rich Proteins (PRPs)と相同性があったのは、静岡産の2サンプルであった。また、メインの分画であるアカネズミ(盛岡産)30kDとアカネズミ(静岡産)30kDのタンパク質を酵素消化してアミノ酸シークエンスをおこなった。その結果、タンニン結合タンパク質ではなかった。・森林げっ歯類のうち、ドングリ食であるアカネズミ、ドングリ食と草食の混合食であるヒメネズミ・シマリス・ニホンリス、樹皮を主とする草食のエゾヤチネズミ、完全草食のハタネズミの6種の唾液からタンパク質を抽出単離して、PRPs量の測定、およびSDS-PAGEによる分画と、その分画のタンパク質の精製をおこなった。その結果、PRPsの含有量が最も多かったのは混合食であるヒメネズミで、その次はドングリ食のアカネズミ、そして混合食のシマリス・ニホンリス、そして最も少なかったのは、草食性のエゾヤチネズミ・ハタネズミであった。この結果は、食餌と唾液中のPRPs量との相関はリーズナブルであったといえるが、完全ドングリ食のアカネズミより混合食のヒメネズミのPRPs量が多いのは予想外であった。また、草食性のエゾヤチネズミ・ハタネズミの唾液中にもかなりのPRPsを含んでいたことより、以前はこの2種もタンニンを含むドングリ等を食べていた可能性が高いが、現在は必要なくなったといえる。このように森林性齧歯類は、基本的にはタンニン結合タンパク質であるPRPsを唾液中にもっており、現在ではそれぞれの生活様式にあわせて食餌を変化させてきたといえる。

言及状況

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2)出典元 https://t.co/vXO7U3hwzR ちょっと引用しますね。 『(前略)唾液からタンパク質を抽出単離して、PRPs量の測定(略)その結果、PRPsの含有量が最も多かったのは混合食であるヒメネズミで、その次はドングリ食のアカネズミ、そして混合食のシマリス・ニホンリス(略)であった。』(続

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