- 著者
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福田 正己
町村 尚
平野 高司
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(S)
- 巻号頁・発行日
- 2002
現地観測の結果東シベリアヤクーツクのタイガ内に攪乱と不攪乱個所のキャノピーを超える観測タワーを設置し、水・熱・二酸化炭素収支の連続モニタリングを行った。そのための機器(CO2/H2Oアナライザー、超音波風速計、土壌水分計)を用いた。毎年4月末に現地入りし、2本のタワーを設置して10月までの連続観測を実施した。更にオープントップチャンバー法により土壌呼吸の連続観測を行った。永久凍土融解過程をモニタリングするために、対象サイトでボーリング調査を毎年実施した。伐採前にはNEPとして86mg/m2・dayの二酸化炭素が森林に吸収されていた。しかし伐採後には日射の増加で地中温度が上昇し、土壌中の有機物分解が促進されて大気側への二酸化炭素の放出に転じた。更に撹乱で地表面での熱収支バランスが乱れ、永久凍土の上部での融解が進行した。その結果地中への伝達熱が増加し永久凍土は約10%より深くまで融解した。こうした融解では上部に含まれるメタンガスの放出を促す。攪乱による温暖化の促進タイガの攪乱のおもな原因は森林火災である。本研究では森林火災の代わりに全面伐採による影響評価実験を行い、タワー観測・土壌呼吸観測・永久凍土融解観測を行った。それらの結果から地球温暖化へ多大の影響を与えることが明確になった。(1)火災時の直接的な二酸化炭素放出(2)火災後の土壌呼吸増加による二酸化炭素の放出(火災後数十年間)(3)火災跡地での凍土融解によるメタンガス放出(火災後数百年間)いずれも地球温暖化を加速させる効果となる。