著者
宇佐見 義之
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

カンブリア紀に生息した節足動物アノマロカリスの生態を研究した。アノマロカリスは種によっては肢を持つ底棲の水棲動物であるが、主に発達した14対のヒレで海底近くを泳いだものと思われる。そこで、本研究では流体の中でこれら14対のヒレをどのように動かしたらうまく前進するか計算した。流体の中で複雑な形状の物体を動かす計算は通常は難しいが、本研究では粒子法を採用することによりこの計算を実行した。粒子法は越塚が開発し配布しているMPS法のプログラムを利用した。その結果、アノマロカリスは14対のヒレを波打たせるように滑らかに動かす方法が速度/エネルギー比という観点で効率良く全身することがわかった。次に、アノマロカリスの形態の変化を研究した。アノマロカリスの形態は化石でしかわからず、また、どのような生物から進化してかについての化石情報は一切ない。そこで、コンピューターの中で原始的なアノマロカリスの形態を仮定し、そこからの進化過程を研究した。原始的な形態としては細い付属肢を仮定し、その幅が広がることにより完成したアノマロカリスの体型になる過程を考えた。その結果、付属肢の幅が広がるにつれ速度/エネルギーが一定になるように速度が上昇するが、完成したアノマロカリスになった途端、速度/エネルギーが飛躍的に大きくなることがわかった。化石では、完成したアノマロカリスの化石しか発見されないが、いずれにせよ、アノマロカリスはなんらかの原始的な生物から進化した筈である。しかし、それらの途中段階は化石には残らず、完成した体型を獲得した段階で繁栄し、また多様化を起こしたと考えられる。このような進化のプロセスが、本研究で解明した力学を背景に起こったと考えることができる。

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