著者
中田 理恵子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

葉酸が欠乏すると、ホモシステインからメチオニンへの代謝が阻害されて、血漿ホモシステイン濃度の上昇を引き起こすことが知られている。過剰なホモシステインは、血管内皮に損傷を与えて、動脈硬化性疾患の一因になることが注目されているが、その機構については十分に明らかにされていない。そこで、葉酸の欠乏により上昇したホモシステインが、血管の機能にどのような影響を与えるのかを検討するとともに、葉酸欠乏によるホモシステイン上昇の調節機構を、遺伝子レベルで明らかにすることを試みた。3週齢雄性ラットを2群に分け、葉酸欠乏食(葉酸フリー)と対照食(葉酸8mg/kg diet)各々自由摂取させた。実験食開始後4, 6, 8週目に血液,血管,肝臓を採取し、血漿と肝臓の葉酸量およびホモシステイン量を測定した。また、血漿中の一酸化窒素(NO)量を定量するとともに、血管中の血管内皮型NO合成酵素(eNOS)のたんぱく質量を測定した。さらに、肝臓にホモシステイン代謝酵素のmRNA量を測定した。血漿および肝臓中の葉酸量は、欠乏4週目から有意に減少した。一方、血漿と肝臓のホモシステイン量は有意に増加した。血管では、TBARS量の増加とグルタチオン量とビタミンC量の減少が見られた。血漿中のNO量は欠乏6週目から有意に低値を示し、eNOSたんぱく質量も減少していた。葉酸欠乏による血漿ホモシステインの上昇は、血管に酸化ストレスを与え、血管内皮の機能障害を誘導して、NO量の減少を起こすと考えられた。さらに、葉酸欠乏ラットの肝臓では、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR),メチオニン合成酵素(MS),シスタチオニン-β-合成酵素(CBS)のmRNA量が、対照群に対して有意に減少しており、葉酸欠乏によるホモシステインの上昇は、MTHFR, MS, CBS各遺伝子の発現が減少することによって起こると考えられた。

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奈良女子大学 葉酸の生体内機能の評価に関する研究-動脈硬化予防因子としての葉酸の重要性- https://t.co/IdgYaoT9ga

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