著者
丹生谷 博 笠原 賢洋
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

タバコモザイクウイルス(TMV)抵抗性遺伝子(N)はウイルス感染により過敏感応答を伴う細胞死を誘導して,宿主細胞内にウイルスを閉じ込めて感染拡大を防ぐ働きがある。我々は,N遺伝子の機能解明を目指して,N類似遺伝子のcDNAを多数単離して解析を行った結果,N類似cDNAには配列上の類縁関係から4つのグループ(A〜D)が存在することが分かった。これらのうち,N遺伝子と相同性の高い2つのN類似cDNA(NL-C26,NL-B69)を代表的クローンとして選定し,それらの全長cDNAを単離した。これらの全塩基配列を決定した結果,NL-C26とNL-B69はN遺伝子と同様のTIR-NBS-LRRクラスに属し,N遺伝子とアミノ酸レベルでそれぞれ78,73%の相同性を示した。次に,NL-C26,NL-B69の機能ドメイン(TIR, NBS, LRR)をN遺伝子の対応するドメインと置換したキメラcDNAを作製し,アグロインフィルトレーション法によりウイルス複製酵素のヘリカーゼドメインp50と共にN. tabacum cv. Samsuinnの葉で発現させた。その結果,NL-C26のTIR, NL-B69のTIR, NL-B69のNBSのいずれかを使用したキメラは明確なHRを誘導したが,NL-C26やNL-B69のLRRを使用したキメラ等はHRを誘導しなかった。以上より,NL-C26のTIR, NL-B69のTIRとNBSにはN遺伝子の機能にとって重要なアミノ酸が保存されていること,また,HR誘導にとってN遺伝子のLRRはN類似遺伝子のドメインには代えられないことが判明した。タバコから機能性ドメインを有するN類似遺伝子の発見は画期的であり,N遺伝子のcDNAを導入した一過性発現でHRを誘導できる系の確立は今後の機能解析に非常に有用である。

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