著者
東 達也 安里 亮
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本年度は甲状腺癌そのものの検討は行わず、頚部リンパ節の検討を行った。甲状腺癌および下咽頭癌の術前患者43名を検討し、これらの症例において見られた頚部リンパ節転移を検討し、リンパ節転移の良悪性鑑別を試みた。リンパ節は術後に病理組織にて確認された転移性のリンパ節が60ケ、転移のないリンパ節が81ケが対象となった。良悪性鑑別は通常の超音波検査、パワードップラー超音波、およびエラストグラフィで行った。通常の超音波検査、パワードップラー超音波では良悪性の鑑別の因子として「短軸径」 「短軸-長軸径比」 「エコー濃度」 「石灰化」 「定性的血流量」を用いた。エラストグラフィでは良悪性の鑑別の視覚的因子として「リンパ節視覚的描出」 「視覚的輝度」 「境界部の規則性」 「境界部の明瞭性」、さらにエラストグラフィでは定量的因子として「リンパ節・周囲筋肉ストレイン比」を用いた。結論として「リンパ節・周囲筋肉ストレイン比」が1.5以上という因子が頚部リンパ節転移の良悪性鑑別因子としてもっとも正確で、鋭敏度98%、特異度85%、正診度92%であった。これに対し通常超音波エコーでは「短軸-長軸径比」が0.5以上という因子がもっとも正確であったが、鋭敏度81%、特異度75%、正診度79%程度であった。エラストグラフィは昨年度までの甲状腺癌の良悪性鑑別のみでなく、頭頚部癌の頚部リンパ節転移の良悪性鑑別因子としても有用であることが確認された。

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