著者
福田 宏
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1年目となる19年度においては,オーストリアとチェコにおけるオリエンタリズムの比較を行った。その素材として着目したのが,戦間期にヨーロッパ運動の担い手として活躍したチェコ地域出身の貴族,リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーとカール・アントン・ロアンの2人である。両者はヨーロッパ統合史のなかで重要な意義を持つ人物であるが,私は,彼らのヨーロッパ意識とその裏返しとしてのオリエント意識に注目し,オーストリアとチェコにおける「非ヨーロッパ」への眼差しを抽出する作業を行った。この点に関しては,東欧史研究会などで口頭報告を行い,既に論文を投稿しているが,今年度中に公にするには至らなかった。本報告書で挙げた2つの業績は,この作業の副産物と言えるものであるが,メインの成果ではない。今年度の反省点である。なお,私は19年2月より在スロヴァキア大使館の専門調査員に採用されたため,本研究は18年度で終了し,19年度と20年度については廃止せざるを得なくなった。私が若手研究(B)を途中でキャンセルするのはこれが2回目である。前回(課題番号14720059,H14〜16)の場合は,北海道大学法学部助手の任期が途中で切れたため,今回については,同大学スラブ研究センター助手の任期が18年度で切れたため,である。今回については,同機関で無給のポストを得,科研を継続できる見込みはあったが,生活が成り立たなくてはそもそも研究はできない。痛恨の極みである。無給のポストでも科研費を得られるという現在の制度については,多くの若手研究者が高く評価しているが,アルバイトなどで生活の糧を得ながら研究を遂行するには多くの困難が伴うのも事実である。今後は,科研費の「中断」などを可能にするなど,一層の柔軟な運用をお願いする次第である。

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