著者
小川 仁 佐々木 巌 舟山 裕士 福島 浩平 柴田 近
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

当初、無菌マウスに腸内細菌叢を導入した際の肛門を用いて研究を行う計画であったが、無菌マウスの購入が不可能となり、この計画は中止せざるを得なかった。直腸切断術の手術標本から肛門組織を採取し、免疫染色等で肛門免疫機構について研究を行った。肛門には、肛門腺付近を中心とした豊富な免疫担当細胞が存在するが、機能的な解析には至らなかった。また、肛門免疫機構と密接に関連すると考えられる回腸嚢炎について研究を行った。回腸嚢炎は潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘・回腸嚢肛門(管)吻合術後に発症する長期合併症であり、多くはciprofloxacinやmetronidazoleなどの抗菌薬内服により軽快する。我々はこれらの治療に抵抗した回腸嚢炎患者の便中にClostridium Difficile toxin(以下、CD toxin)を検出した3例を経験した。3例中2例は以前の回腸嚢炎に対しては通常の抗菌薬が奏効していたが、再燃時には効果を認めず、この時点で便中CD toxin陽性と判明した。残り1例は回腸嚢炎初発の時点で通常の抗菌薬治療が効果なく、便中CD toxin陽性と判明した。3例とも「C.Difficile関連難治性回腸嚢炎」と診断し、vancomycin内服により治療したところ速やかに軽快した。通常の抗菌薬治療によって改善しない回腸嚢炎ではC.Difficileの関与を疑い、適切な抗菌薬治療を行う必要がある。これらの研究成果を学会、論文で発表した。

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