著者
冨島 義幸
出版者
滋賀県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

古代・中世の浄土信仰にもとづく建築のなかでも、本年度は中尊寺金色堂を中心に空間構成理念の調査・研究をおこなった。また、阿弥陀堂など浄土信仰の建築の本尊となる阿弥陀如来像をはじめとする仏像の調査をおこない、そこにこめられた密教的意味を明らかにした。主たる成果は以下のとおりである。1. 中尊寺金色堂における密教の影響:金色堂の四天柱には密教の尊像が描かれ、これまでこられの尊像は浄土教の阿弥陀四十八願にもとづくとする説と、密教の胎蔵界曼荼羅にもとづくとする説の二説があったが、五十二身像という密教の阿弥陀曼荼羅にもとづくとする新たな説を提示した。また、従来、金色堂の須弥壇に安置された奥州藤原氏三代の遺体は、東北地方のミイラ信仰と結びつけてとらえられてきたが、棺におさめられた曳覆曼荼羅などの副葬品を調査・検討し、同時代の京都の貴族と同じ密教による葬送であったとする説を提示した。この成果は冨島義幸「中尊寺金色堂再考」(入間田宣夫編『兵たちの時代III兵たちの極楽浄土』高志書院)として発表した。2. 仏像と密教修法:仏教建築の本尊として安置された仏像は、その建築空間の宗教的な意味を決定づける、きわめて重要な要素である。阿弥陀如来像や観音菩薩像など、いわゆる浄土教にもとづく造像とされてきた仏像でも、その胎内にその像の種子を書いた月輪が納入されるなど、密教の要素が認められることが指摘されてきたが、その具体的な意味については明確にされていなかった。本年度は、仏像胎内の月輪や内部に直接書き付けられた本尊種子について、現存作品・記録・聖教を総合的に調査・検討し、こうした月輪種子が密教修法にもとづくものであること、すなわちこうした月輪種子を胎内におさめる仏像が、密教修法の本尊となっていたことを明らかにした。本研究の成果は冨島義幸「修法と仏像-胎内の月輪種子を手がかりとして-」として発表した。

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@7SKSXHEerzFNdTS なるほど。 鳳凰堂内部の彫刻には密教的な文字が書かれてるらしいので一致するのかも。 https://t.co/PdC8icnQcX

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