著者
大脇 万起子 法橋 尚宏 小林 京子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は前年度の結果を基に引き続き臨床検討を行った。倫理的配慮・契約は前年度に準じた。滋賀県立大学では、保育園1園、中学校(障害児学級)1校の協力を得て、表出言語障害のある知的発達障害児を対象として、それぞれの職員に現場の生活指導の用具として使用をしてもらい、ソフトの実用性について検討した。結果、両施設とも、相手の返答や表情への反応と、コミュニケーションを理解して楽しむ場面が見られるようになった。この他に保育園では機器に興味を持ち関わってきた他児と対象児が普段はもつことが困難な場面共有と、言葉を発する必然性を子どもが感じる場を生み出せた。中学校では保護者や職員のみが理解可能な対象児固有の言葉を一般社会で通じる言葉へ置き換える指導に用いて効果が認められた他、授業中の表情が能面様から穏和な笑顔になり、多動が消失して着席が維持できるようになった。昼休みも引きこもらず、他児と同じ部屋で研究ソフトの入ったパソコンで遊ぶようになった。検討終了時には、使用した教員および協力者以外の子どもと親から、研究継続への協力の申し出と機材使用の要望があった。神戸大学では、養護学校に通学中の子どもを対象に臨床評価(1ヶ月の介入プログラム)を行うため、ある養護学校の協力を得て2台の機器(Uribow Talk)を用いて介入し、表出言語能力の異なる2名の実践検討を行った。対象者には、事象(食事が出てくる,音楽がかかるなど)が機器から発声される音声の内容に合わせて起こることへの理解が形成され、機器に興味を持つようになった。また、要求を示す音声を使用すると、機器使用への要求が高まる様子が見られ、要求に基づいた言語を機器にセッティングすることで言語理解を効果的に高められる可能性が示唆された。以上のことから、開発ソフトの活用範囲は広く、各発達段階に応じた言語認知と社会性の発達支援に貢献できる可能性が示唆された。
著者
上町 達也
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,日本の豊富なアジサイ遺伝資源を利用して環境耐性をもつ園芸品種を育成するために,これらの系統学的な解析を行うとともに,強光耐性並びに乾燥耐性を持つ育種素材の探索を行った.①ガクアジサイとエゾアジサイの分布境界域が,頸城山塊であること,②伊豆半島ではガクアジサイとヤマアジサイの自然交雑が生じていること,③アジサイ園芸品種の中にはガクアジサイとエゾアジサイの種間交雑品種が多く含まれること,④八丈島と青ヶ島のガクアジサイ野生系統において乾燥耐性が認められること,⑥強光障害には2タイプあり,いくつかの耐性系統が認められること,が明らかとなった.
著者
板谷 裕美 廣瀬 潤子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、分娩時大量出血に伴う産後貧血を合併した褥婦と、正常な経過をたどる褥婦との間で、母乳中の鉄含有量および乳汁分泌量に差があるのかどうか、縦断的に比較検討を行うことであった。分娩時800ml以上の大量出血を起こし、産褥早期のヘモグロビン10.0/dl未満・ヘマトクリット33.0%未満の貧血を合併した褥婦5組を症例群、分娩時大量出血および産褥期貧血のない褥婦15組を対象群とし、産褥入院中、産後1カ月、3カ月、6か月の各時期における母乳中鉄含有量、1日乳汁分泌量、BDHQを用いた褥婦の鉄摂取量を調査した。その結果、母乳中の鉄含有量と乳汁分泌量にはいずれも有意な差を認めなかった。
著者
水野 章二
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

里山を表示する制度的な用語は存在しなかったが、「後山」は中世初期から広くみられ、「向山」も史料・地名に多く確認できる、中世里山の一般的な表現であった。里山は交通・流通などの条件によっては、鎌倉期から開発が進んで酷使され、植生が貧弱な「野山」「無毛山」化する。里山は資源獲得だけでなく、牛馬放牧の場でもあったが、地形条件によっては屋敷林や平地林の形態をとり、水防・防風・防火などの多様な機能を果たした。
著者
牧野 耕次 比嘉 勇人 甘佐 京子 山下 真裕子 松本 行弘 山本 佳代子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

境界とは、二つ以上のものを区切る時のさかい(境)となるものであり、人間に関しては、身体的、心理的、社会的、霊(スピリチュアル)的境界があると言われている。本研究では、精神科における看護師の境界の調整に関する技術的要素を抽出し、その技術をどのように獲得してきたのかを明らかにした。さらに、総合病院の患者-看護師関係における境界概念に関するモデルを抽出した。
著者
伊丹 君和 安田 寿彦 豊田 久美子 石田 英實 久留島 美紀子 藤田 きみゑ 田中 勝之 森脇 克巳
出版者
滋賀県立大学
雑誌
人間看護学研究 (ISSN:13492721)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.11-21, 2006-03-31
被引用文献数
2

背景 高齢化が進む中で人間の基本的な生活行動に看護支援が必要な人々が増加するとともに、看護者の腰痛も多発する状況にある。前報では、下肢の支持性が低下した人に対する移乗サポートロボットを用いての立ち上がり動作実験を行い、サポートを受ける人の身体負担が少ないロボットの動きについて検証を行った。その結果、深く前傾しロボットに伏臥して立ち上がる方法で筋疲労は比較的低く、胸部や腹部など身体に密着する側に改善を加えれば有効にロボット活用できる可能性が示唆された。研究目的 本研究では前報に引き続き、下肢の支持性が低下した人を対象とした移乗動作実験を行い、看護者が移乗動作をサポートする場合に、サポートを受ける側とサポートする側の両者にとって安全・安楽・自立を考慮した方法について検証することを目的とした。方法 1.対象および研究方法2004年10月、以下の実験および調査を実施した。被験者は、健康な平均的体格の20歳代の女子4名とした。実験は、看護現場で移乗方法として広く用いられている患者の両足の間に看護者の片足を入れて移乗する方法(「中足法」とする)と、前報で比較的有効な移乗サポートロボットであると検証されたロボットの動きに近い患者を前傾にして看護者の背部に乗せて移乗する方法(「背負い法」とする)を取り上げて移乗動作を行った。分析は、表面筋電図測定装置(SX230)を用いて各被験筋について筋積分値を算出して両者の比較を行った。また、同被験者に対して、安全・安楽・自立の観点から主観的反応調査を行った。2.倫理的配慮 対象は研究の趣旨に同意した者のみとし、研究参加に同意した後でも、いつでも辞退可能であること。また、プライバシーの保護についても文書と口頭で伝えた。結果 移乗サポートを受けた患者側の実験・調査結果をみると、中足法を用いた場合では、特に上肢に苦痛を感じており、動作時6秒間の筋積分値を比較しても上肢の筋活動が高いことが明らかとなった。一方、背負い法を用いた場合では、苦痛は比較的感じていないものの安全性・安心感・自立性の面では低値を示していた。また、移乗サポートを行った看護者側の結果では、中足法を用いた場合に腰部への負担が大きく、背負い法を用いた場合に上肢・下肢に負担が大きいことが認められた。結論 以上より、下肢の支持性が低下した人に対する移乗動作では、看護現場で広く行われている中足法はサポートを受ける側とサポートする側の両者において身体的負担は大きいものの、安全性・安心感・自立性の面からは有効であると考えられた。一方、背負い法では身体的負担は比較的低いものの、サポートを受ける患者側の安心感は低いことが明らかとなり、それぞれの移乗法の課題が示唆された。
著者
宮本 雅子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

高齢社会における室内色彩計画のための資料を得ることを目的とし、調査研究を進めた。まず、高齢者と若齢者が持つ高齢者の居室に望まれるイメージについては、それほど大差ないものであることがわかった。よって、空間設計を行う際のイメージ設定に関しては、設計者の年齢による配慮は特には必要でないことが明らかとなった。色彩のイメージは高齢者と若齢者で異なる部分が見られた。そこで、室内に配色した場合の空間のイメージについて捉えた。ソファの色彩と壁面の色彩から受ける印象評価については、明度の高いB系を基調としたインテリアが高齢者に好まれている。しかし、若齢者には好まれないため望ましい配色とはいえないが、利用者の大部分が高齢者のみとなる施設などにはこの色は利用できると考えられる。また、ソファ茶色・からしのYR系でYR系の壁の場合、若齢者・高齢者ともに価値因子に対する評価が高く、多くの人が出入りする空間では、有効な配色であると考えられる。さらに、高齢者が、好ましいと判断する基本的なイメージは、「配色が良い」「明るい」「落ち着く」「バランスがよい」「色が好き」などであることがわかった。また、「明るい」と「落ち着く」というイメージが強く結びついている。具体的な内容としては、「同系色の組み合わせ」「ソファと床の色」「壁とソファの色」「ソファの色」「壁と床の色」としており、特にソファの色に注目していることがわかる。若齢者も基準としているイメージは大きくは変わらないが、「落ち着く」と「暖かい」というイメージが大きく結びついている。具体的な内容としては、高齢者が具体的な部位の色彩に注目しているのに対し、若齢者は全体的な色の「統一感」「同系色の組み合わせ」などによって好ましさを判断している。以上から、高齢者と若齢者では、室内色彩空間のとらえ方が異なることが把握できた。
著者
久留島 美紀子 本田 可奈子 豊田 久美子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
人間看護学研究 (ISSN:13492721)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.93-96, 2005-03-31

背景 近年、コンピュータの普及により、基礎看護教育において、マルチメディアの導入が盛んに行われるようになっている。我々は、DVカメラとパソコンを使用し、グループ単位で映像を撮影、編集し発表するグループワークを導入するにあたり、その操作方法についての説明会を実施した。目的 説明会・グループワークに関するアンケート調査を実施し、今後の説明会の内容構成の資料とする。方法 本学部一学年の学生62名を対象に、操作方法の説明会を行い、グループワーク終了後、説明会に関するアンケート調査を実施した。得られたデータは統計的に処理した。結果 説明会には33名(54.1%)の参加があった。教員2名で対応したことにより、学生からの質問を受けやすく、また進行状況に合わせての説明となったので、録画、編集ならびに保存の一連の作業を全て行うことができた。アンケートの結果、12名(36.4%)が説明内容を「わかりやすい」、19名(57.6%)が「ややわかりやすい」と回答した。また、説明会がグループワークでの作業に役立ったかについては、「役立った」20名(62.5%)、「やや役立った」12名(37.5%)であった。「あまり役立たなかった」、「役立たなかった」の回答はなかった。結論 説明会の参加者は33名と約半数であったが、学生から積極的な質問が出た。また、アンケート結果より、説明内容のわかりやすさ、グループワークの作業への有効性の両方で高い評価を受け、説明内容が妥当であったことが示された。
著者
崔 恩永
出版者
滋賀県立大学
巻号頁・発行日
2017

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著者
冨島 義幸
出版者
滋賀県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

古代・中世の浄土信仰にもとづく建築のなかでも、本年度は中尊寺金色堂を中心に空間構成理念の調査・研究をおこなった。また、阿弥陀堂など浄土信仰の建築の本尊となる阿弥陀如来像をはじめとする仏像の調査をおこない、そこにこめられた密教的意味を明らかにした。主たる成果は以下のとおりである。1. 中尊寺金色堂における密教の影響:金色堂の四天柱には密教の尊像が描かれ、これまでこられの尊像は浄土教の阿弥陀四十八願にもとづくとする説と、密教の胎蔵界曼荼羅にもとづくとする説の二説があったが、五十二身像という密教の阿弥陀曼荼羅にもとづくとする新たな説を提示した。また、従来、金色堂の須弥壇に安置された奥州藤原氏三代の遺体は、東北地方のミイラ信仰と結びつけてとらえられてきたが、棺におさめられた曳覆曼荼羅などの副葬品を調査・検討し、同時代の京都の貴族と同じ密教による葬送であったとする説を提示した。この成果は冨島義幸「中尊寺金色堂再考」(入間田宣夫編『兵たちの時代III兵たちの極楽浄土』高志書院)として発表した。2. 仏像と密教修法:仏教建築の本尊として安置された仏像は、その建築空間の宗教的な意味を決定づける、きわめて重要な要素である。阿弥陀如来像や観音菩薩像など、いわゆる浄土教にもとづく造像とされてきた仏像でも、その胎内にその像の種子を書いた月輪が納入されるなど、密教の要素が認められることが指摘されてきたが、その具体的な意味については明確にされていなかった。本年度は、仏像胎内の月輪や内部に直接書き付けられた本尊種子について、現存作品・記録・聖教を総合的に調査・検討し、こうした月輪種子が密教修法にもとづくものであること、すなわちこうした月輪種子を胎内におさめる仏像が、密教修法の本尊となっていたことを明らかにした。本研究の成果は冨島義幸「修法と仏像-胎内の月輪種子を手がかりとして-」として発表した。
著者
福渡 努 大貫 宏一郎
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

食品栄養学的観点から,トリプトファン代謝産物キヌレン酸産生の制御による高次脳機能低下の予防・軽減を目指した.細胞・組織レベルの研究により,キヌレン酸産生抑制作用をもつアミノ酸10種を見出し,その作用機構を明らかにした.動物実験により,アミノ酸関連化合物の摂取がキヌレン酸産生を抑制し,ドーパミン機能を改善することを明らかにした.行動実験により,キヌレン酸産生増加によって社会行動が低下することを見出し,食餌のアミノ酸組成を変えることによってこの行動異常を抑制できることを明らかにした.以上の結果より,アミノ酸摂取によってトリプトファン代謝を制御し,高次脳機能を調節できる可能性が示された.
著者
京樂 真帆子 千本 英史 岩間 香 今 正秀 山田 邦和
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

平安貴族文化を象徴するものの一つに、牛車がある。また、牛車に乗るということは、ミヤコという都市文化を表すものでもあった。そこで、古代・中世貴族社会における「乗り物文化」研究のために、古記録、文学作品、絵画資料、考古資料などの整理・分析を行った。その結果、牛車や輿は、乗る人の身分、財力、人脈などを可視化するものであり、また、人々に見られることを意識した都市文化を創り出したことを明らかにした。
著者
灘本 知憲 浦部 貴美子 川村 正純
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

最近では、生理的な効果を持ち、しかも環境に安全な天然物の利用に関心が寄せられている。野草は至る所に自生しているため、容易にそして安価に手に入れやすく、幅広い利用が考えられる。そこで、本研究は(1)野草の防臭あるいは消臭効果の検索(2)抗菌性試験系と消臭活性試験系とによる効果の確認(3)防臭あるいは消臭効果を有する野草の有効成分の検討(4)食品への適用の有効性、の目的にしたがって検討を行った。得られた結果は次に示すとおりである。1.悪臭発生のモデル食品としてブタ小腸を用いて野草の防臭効果を検討した結果、ブタ小腸に存在する嫌気性菌の増殖を著しく抑制し、悪臭の発生を顕著に抑える野草として、タンポポを見出すことができた。2.メチルメルカプタンを指標として野草の消臭力を測定した結果、高い消臭効果を有する野草を見出すことができた。中でも消臭率の高かった8種類の野草(タカサブロウ、セイタカアワダチソウ、ホウキギク、ヨモギ、アメリカセンダングサ、タンポポ、ノアザミ、オニノゲシ)は、いずれもキク科植物であった。3.Proteus mirabilisに対する野草の抗菌力を測定した結果、強い抗菌力を示す野草として、タカサブロウ(キク科)とイタドリ(タデ科)を見出すことができた。4.消臭効果の顕著であったドクダミとタンポポから、それぞれ消臭性成分を分離することができた。ドクダミとタンポポは薬用植物として、また食べられる野草としても利用されている。そのため、安全性については比較的高いものと考えられる。
著者
森 紀之
出版者
滋賀県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アリルイソチオシアネート(AITC)の投与によるTRP受容体を介した糖質エネルギー代謝変化へのインスリン分泌機構の関与について検討した。AITCはTRPV1を介して血中インスリン濃度を上昇させること、マウスの膵臓より単離した膵島に直接作用しインスリン分泌を促進しうること、さらにAITC投与による糖質エネルギー代謝変化および血中インスリン濃度の上昇にはアドレナリンβ受容体を介した交感神経系が関与することを示した。
著者
横井 和美 山本 はるみ 北村 幸恵 平井 由香里
出版者
滋賀県立大学
雑誌
人間看護学研究 (ISSN:13492721)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.61-70, 2005-03-31

背景 成人看護学では、看護の対象者である成人を総合的に理解し、成人がもつ健康へのニーズに対応できる看護を学ぶ。成人の役割や発達課題及び心理的ストレスの内容は、成人の発達段階別にその時期の特性として提示されているが、健康観や健康行動の特性については発達課題との関連で個別なものとし発達段階別での傾向や特性は示されていない。この健康観や健康行動は健康自己管理を左右する因子ともなり、発達段階別の特徴を理解しておくことは看護介入する上で必要な情報となる。目的 成人各期の人々の健康観や健康行動の特性を学習することは、対象者の状態にあった看護介入を行なう上でも重要であることから、成人各期の健康観や健康行動を調査し、生理的年齢区分での発達段階別に相違があるものか否かを検討し、成人期の人々の健康観や健康行動についての特徴理解を深める。対象及び方法 看護学生とその家族及び看護学生を取り巻く人々213名を対象に、健康観と普段の健康への取り組み内容の健康行動と、実際の不健康を生じたときの健康への回復行動をみるため風邪の対処方法についてのアンケート調査を平成15年4月〜7月に行った。発達段階別に健康観・普段の健康行動、風邪に対する対処方法を比較した。結果 青年期・成人前期の子世代と、成人中期・成熟期の親世代、老年期の祖父母世代間での比較では、健康観や普段の健康行動の内容に有意差(p<0.01)を認めた。個人の精神的な内容(気分爽快、リラックス等)に健康を求めた人は青年・成人前期に多かった。一方、普段の健康行動で、老年期の方は、医療への受診や社会活動の参加を他の発達段階の方よりも多く行なっていた。しかし、実際の風邪の対処方法の内容に各発達段階別の差は認められなかった。いずれの発達段階でも風邪症状の発熱の有無で対処法方が異なり、発熱を機に専門家に頼ることが示された。結語 成人の健康観や健康行動は、青年・成人前期の子世代と成人中期・成熟期の親世代、老年期の祖父母世代で相違があることが示された。しかし、実際の風邪の対処方法では発達段階の差はなく、症状によって健康行動が左右され、看護介入するタイミングが示唆された。
著者
堂満 華子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地球深部探査船「ちきゅう」の下北半島沖慣熟航海コア試料C9001Cコアの古地磁気層序・火山灰層序・微化石層序・酸素同位体層序にもとづく年代モデルを構築し,C9001Cコアが海洋酸素同位体ステージ1~18までの過去74万年間をほぼ連続的に記録することを明らかにした.また,北太平洋における中期更新世の重要な浮遊性有孔虫化石基準面であるNeogloboquadrina ingleiの終産出層準がステージ16の後期あるいはステージ16と15の境界付近に位置することを示した.
著者
ボルジギン ブレンサイン
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は現代中国の56の民族の枠組みが如何に認定されたかについて、八旗集団の動向を把握することを通して分析した。主に清帝国から現代中国成立過程において、民族集団が如何に融合集散を繰り返したかを明らかにした。平成24年度には「中国の政治改革と少数民族の権利」と題する国際シンポジウムを開催し、ケンブリッジ大学やハーバード大学、中国社会科学院などの研究者を集めて議論した。ここ数年間、海外で行われた国際会議に出席し、研究成果を発表した。平成26年度には「軍閥と内モンゴル」と題する科研シンポジウムを開催し研究の取りまとめをした。研究期間中に学術論文3編、編著書4部を発表し、学会発表を3回行ってきた。
著者
竹下 秀子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

ボノボ(Pan paniscus)を対象とし、複数物体による道具の構成が必要とされる場面で、当該の道具使用に関して、ヒトによるモデル行動がある場合を設定し、実験を実施した。チンパンジーのヤシの種子割りにみられるような、ユニットメソッドによる道具の構成が可能かどうかを、明らかにすることを目的とした。11頭の飼育ボノボを対象とした第1実験の結果、3頭のおとなのボノボは、1本の棒をかき寄せ棒として使用した。1頭のおとなオスは1本の棒をプラスチックケースに投げつけた。1頭のおとなメスと8歳と4歳のオスは棒ではなくウッドウールをプラスチックケースにむけて差し出し、引き戻した。おとなのうち2頭は、棒を使用して、多様な対象操作をおこなった。第1実験でもっともアクティヴで多様な行動を示したおとなの2頭を対象として、集中的なモデル行動の提示をおこなう第2実験を実施した。その結果、1頭は、幾度か2本の棒をつなぎ合わせることができたが、そのたびに、即座に分解してしまい、できあがった長い棒を道具として使うことはなかった。もう1頭も、一貫してアクティブであり、1本の棒でなんとかプラスチックケースをかき寄せようとした。利き手である右手は、4本の指の協調で精緻な操作が可能であり、左手は常に補助的に有効に使用されていた。両手使用の対象操作技能は非常に高いレベルにある。また、1本の棒使用ではより長い棒を選択していた。使用していた棒をケージの外に手放してしまうと、それを取り戻すために、短い棒を使用し、それも手放した場合には、ウッドウールを利用するというように、複数物体を、順次利用する行動も出現した。しかし、両対象個体とも、90試行を経ても、2本の棒を組み立てて、新たな長い棒を構成し、刺激の食物をかき寄せる行動は出現しなかった。
著者
福岡 克弘 高木 敏行 小島 史男 相山 英明 橋本 光男
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

立体的な形状をした被検査対象物を高精度に非破壊検査する技術の確立を目的とし、磁粉探傷試験と渦電流探傷試験を組み合わせたハイブリッド電磁非破壊検査システムの確立を検討した。具体的には、磁粉探傷試験と渦電流探傷試験において、立体的な形状の強磁性体を探傷するため、三次元空間に均一且つ簡便に磁界を発生できる回転磁界型磁化装置の開発を行った。渦電流探傷試験により極微小な傷を探傷可能とするため、高感度な渦電流プローブを開発し、その特性を評価した。磁粉探傷試験により得られた探傷結果から、傷形状を定量的に評価する手法の確立を目的に、傷の形状と付着磁粉量および傷からの漏洩磁束密度の関係について評価した。