- 著者
-
田村 美由紀
- 出版者
- 国際日本文化研究センター
- 雑誌
- 研究活動スタート支援
- 巻号頁・発行日
- 2021-08-30
本研究では、中途障害(病気の後遺症による手指の麻痺や書痙、視力の低下など)を抱え、自ら筆を執って書くことに困難を極めた作家たちが、口述筆記という書字を他者に代行させる方法で創作活動を継続させたことに焦点を当てる。上林暁・三浦綾子・大庭みな子という三人の作家を具体的事例に取り上げ、障害学の視点から口述筆記による創作の実態を解明する。これらの作業を通じて、作家たちの中途障害との向き合い方や、口述者(被介助者)と筆記者(介助者)との関係性を、摩擦や軋轢といった側面も含めて多面的に浮き彫りにするとともに、口述筆記というケアの営みにおいて身体的な協働性がどのように構築されているのかを明らかにする。