著者
池上 めぐみ(朝戸めぐみ)
出版者
星薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

肥満はうつ病や認知症などの中枢神経系疾患の発症リスクを上昇させる可能性が示されているが、その詳細は不明である。肥満は慢性的な全身性炎症を伴うことが知られている。また、炎症性サイトカイン類の上昇は中枢神経系の機能や細胞の形態を変化させることが報告されていることから、肥満による炎症性サイトカインの上昇が中枢神経を障害し、脳高次機能を低下させる可能性が想定される。そこで本研究では、肥満による脳高次機能障害が脳での炎症性反応に起因するという観点の下、記憶や不快情動反応といった脳高次機能に関わる脳部位である海馬と扁桃体に着目し、脳内の炎症反応に重要な役割を果たすとされるアストロサイトおよびミクログリアの変化を検討した。実験には4週齢のC57BL/6J系雄性マウスを用いた。食餌誘発性肥満 (DIO) マウスは高脂肪食を16週間負荷することで作製した。対照マウスは通常飼料で16週間飼育した。DIOマウスの海馬におけるGFAP陽性アストロサイトとIba-1陽性ミクログリアの変化を免疫組織学的手法により検討したところ、GFAP陽性アストロサイト数ならびにIba-1陽性ミクログリア数はいずれもDIOマウスで減少していた。次に、扁桃体のGFAP陽性アストロサイトおよびIba-1陽性ミクログリアの変化を検討した。その結果、対照マウスおよびDIOマウスの扁桃体においてGFAP陽性アストロサイトの発現は認められなかった。一方、DIOマウスにおいてIba-1陽性ミクログリア数は対照マウスと比べて減少していた。以上の結果から、DIOマウスでは、海馬におけるアストロサイトとミクログリア、および扁桃体におけるミクログリアが減少し、脳内環境が変化していることが明らかとなった。今後さらなる検討が必要であるものの、肥満に伴うこれらの脳内環境の変化が脳高次機能障害をひき起こす可能性が示された。

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