著者
金川 弘司
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1983

生物材料や受精卵の凍結用に冷却曲線を自動的にプログラムできる装置は数種類開発されているが、これらの装置は植氷時の制御が不十分であり、試料を入れてある冷凍室を開放して、外部から冷媒や冷体で刺激を加えたり、氷晶片を投入したりして植氷を行っているために、冷凍室の温度が変動する欠点がある。また、植氷に伴う著しい温度の上昇がみられるのが普通である。これらの温度変動が凍結しようとする受精卵に何らかの悪影響を与えるものと考えられる。今回の研究で開発した凍結装置は、恒温槽、温度制御盤および加圧式液体窒素容器からなっている。恒温槽は、断熱槽、液体窒素槽、ヘリウムスペースおよびフレオン槽からできている。フレオン槽は気相部および液相部(フレオン11)の2つに分かれ、両部の冷却は液体窒素の冷熱によって行われる。液体窒素槽からの冷熱はヘリウムスペースに密封されている熱交換用ヘリウムガスによって、一定速度でフレオン槽内に伝達される。この冷却とフレオン槽内ヒーターの作動は槽内の温度を測定するモニター用温度センサーからの読み取りを通じてヒーター電流をPID制御(比例積分微分動作制御)する温度制御盤のマイクロコンピューターによって制御され、設定した任意の温度と冷却速度が保持される。この温度と速度は数段階に分けてキー入力できるようにプログラミングされている。気相部には凝固点温度(植氷)を予め検知できるように温度測定センサーが付属されており、液相部は温度勾配がほとんどないように撹拌機によって常に撹拌されている。本凍結装置は、植氷時に工夫を加えて、冷凍室を開放したり、外部から操作することなしに植氷を行い、植氷に引続いて起る温度上昇を1.0°C以内に抑えることができた。また、下降時の温度も変動範囲が0.1°C以内に制御できた。本装置を使用して、耐凍剤としての各種糖類および急速凍結法の検討を行った。

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哺乳動物の卵細胞,受精卵および胚の凍結保存法の確立に関する応用的研究 金川 弘司KANAGAWA, Hiroshi 研究期間:1983年度~1985年度 http://t.co/vmqaszyaef http://t.co/Ax8ogm3lgI

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