著者
中井 泉
出版者
東京理科大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

福島第一原発事故により大気中に飛散した放射性物質の性状解明を目的として,大気粉塵および土壌から強放射性の粒子を分離し,大型放射光施設SPring-8での放射光マイクロビームX線分析を中心とした非破壊の性状解明を行った。以下では平成27年度に得られた主要な成果に関して報告する。土壌試料は筑波大学の末木らによって福島県内で採集されたものであり,放射性CsおよびAgの放射能比によっていくつかのグループに分類されることが明らかとなっている。本研究では,1号機由来の放射性物質が飛来したと考えられる原発北西の地域で採取された土壌を対象に,放射性粒子の分離を行った。分離された粒子は,100マイクロメートルを超える大きさであり,球形ではなく歪なものが多い。こうした粒子の形態的特徴は,研究代表者らが先行研究中で報告した事故直後につくばで捕集された放射性大気粉塵,通称「セシウムボール(直径2マイクロメートル前後の球形粒子)」とは明らかに異なるものである。SPring-8における蛍光X線分析の結果,これらの粒子はCsよりもBaを多く含み,またセシウムボールでは検出されていないSrを含むなど,化学組成に明らかな違いが見られた。また,蛍光X線イメージングにより元素分布が均一でないことが明らかとなり,特にFeやMo,Uなどは数マイクロメートルの微小領域に濃集していた。X線吸収端近傍構造解析およびX線回折により,この粒子のバルク部分はセシウムボールと同様のガラス状物質であったが,先述の濃集点には何らかの結晶相が存在していることが明らかとなった。以上のように,2号機由来とされるセシウムボールと今回分析した1号機由来とされる粒子では,明らかな化学的性状の違いが見られた。この性状の違いは,その生成・放出過程の違いを強く反映しているものと考えられ,事故当時に1号機と2号機が異なる炉内状況にあったことを化学的に実証するものである。

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