著者
古志 めぐみ 青木 紀久代
出版者
お茶の水女子大学心理臨床相談センター
雑誌
お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要
巻号頁・発行日
no.19, pp.13-23, 2018-03-01

1990 年代よりひきこもりが日本の若者の問題として取り上げられてきた。これまで,精神科医などの専門家の見解からひきこもり状態にある本人が捉えられてきたが,昨今,本人を対象とした調査研究がなされ始めている。本研究では,ひきこもり本人がどのように自分を捉えているかを明らかにすることを目的に,本人を対象とした調査研究を整理した。その結果,以下の二点が示された。第一に,自己否定感の高さはひきこもりの親和性が高い者の心理的特徴とも共通するが,他者とのコミュニケーション場面への困難感は本人の方がより抱いていることである。第二に,ひきこもり状態から抜け出すプロセスには,本人がひきこもり状態にあることを受け止め,意味を見出していく経過をたどるということである。一方で,ひきこもりへの社会や文化の影響が指摘されているにも関わらず,本人たちがどのように社会や他者を認知しているか,主観的体験にどう表れているか捉えられておらず,今後の課題として見出された。
著者
早川 歩
出版者
お茶の水女子大学心理臨床相談センター
雑誌
お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要
巻号頁・発行日
no.18, pp.57-66, 2017-03-01

心理臨床家訓練として重要なものの一つに,ケースカンファレンス(以下,カンファレンスと表記)がある。\しかし,訓練としてカンファレンスに参加する訓練生がカンファレンスをどのように体験しているかの研究\は十分に行われていない。したがって本研究では,心理臨床家の訓練生がカンファレンスをどのように体験\しているのかを明らかにすることを目的として,訓練課程修了後1~2 年目の心理臨床家に対して半構造化\面接を行った。KJ 法による分析の結果,大きく分けて,【臨床的な見方・考え方の蓄積】の機会になる,【ケ\ースに他者の視点を入れることによる気づき】が得られる,【取り組みや考えの評価をされる】場である,【発\表者とケースを尊重し,応援する姿勢が発表者を支える】場であるという4 つの意味合いがあり,自信や経\験の少なさといった訓練生の特徴が,体験の背景にある要因の一つであることが明らかになった。