著者
三羽 邦久
出版者
ミワ内科クリニック
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

慢性疲労症候群の原因として筋痛性脳脊髄炎に伴う中枢神経系の機能調節障害が2011年に国際委員会より提唱された。診断基準には、心血管系症状として起立不耐症が含まれた。患者の大半は低血圧でSmall heart例が多い。心胸郭比は小さく、心エコー検査でも、左室拡張末期径が小さく、1回拍出量、心拍出量は低値である。左室収縮性の指標の低下はない。低心拍出量症候群として多くの病態が理解できる。強度の疲労、めまい、ふらつき、動悸、悪心などの症状により立位維持困難を訴える起立不耐症は、本症患者の生活機能障害を規定する最重要因子となっている。起立不耐症の病態生理は、立位時の脳血流不足であり、交感神経系の高度緊張も関わる。体位性起立頻拍、起立性低血圧や神経調節性低血圧をしばしば認める。前負荷の低下による低心拍出量状態にも拘らず、血漿renin活性の上昇はなく、血漿aldosteroneおよび抗利尿ホルモン(ADH)濃度は、患者で健常人より低値であり、Renin-Aldosterone系およびADH系の活性化不全があることが判明した。抗利尿ホルモン製剤、デスモプレシンの経口投与は、低尿浸透圧例において、起立不耐症状を緩和し、日常生活活動度を向上させるのに有効であった。