- 著者
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森兼 啓太
- 出版者
- ヴァン メディカル
- 巻号頁・発行日
- pp.169-174, 2020-07-15
標準予防策と手指衛生 医療現場における感染対策の基本が標準予防策であることは言うまでもない。標準予防策は,微生物が存在する・しないに関わらず実施する対策であり,その中心が手指衛生であることも良く知られている。 手指衛生の重要性を示したのがオーストリアのイグナス・フィリップ・ゼンメルワイスである。彼は産科病棟において出産後の妊婦に発生する産褥熱に,医療従事者などの手指に付着した「何か」が関係していて,手指衛生を行うことで産褥熱を減らせるのではないかと考えた。まだウイルスも発見されておらず,細菌に関しても研究途上であったその時代に,彼は石炭酸による手指衛生を医療従事者に実施させることで,産褥熱を大きく減少させた。後に,産褥熱が細菌によるものであり,手指衛生を行うことで産褥熱の原因となる手指に付着した細菌を消毒し減少させることができる,ということが明らかにされた。この功績を称えて,彼は手指衛生の祖と呼ばれている。