著者
岩田 敏
出版者
ヴァン メディカル
巻号頁・発行日
pp.9-16, 2021-03-10

新型コロナウイルスワクチンのうちファイザー社/ビオンテック社,モデルナ社,アストラゼネカ社,ジョンソン&ジョンソン社/ヤンセン社などのワクチンは既に海外で承認され,国内にも導入あるいは導入されようとしている。接種に当たっては,被接種者との十分なリスクコミュニケーションをとり,各施設や地域では安全・円滑に接種できる体制を確保した上で,適切な方法で筋肉内に接種する必要がある。いずれのワクチンも長期的な有効性・安全性については明らかでないことから,注意深いフォローアップが必要である。
著者
猪狩 英俊
出版者
ヴァン メディカル
巻号頁・発行日
pp.8-13, 2017-03-10

IGRAは潜在性結核感染症の診断に有用な検査手段である。基礎疾患別に、潜在性結核感染症から活動性結核を発病するリスクが知られており、臓器移植後、血液透析、TNF阻害薬使用などが該当する。しかし、このような免疫抑制状態にある者は、IGRAを実施しても十分な免疫応答が得られず、正しく潜在性結核感染症の診断ができない可能性がある。そして、これを補う手段は現時点ではない。免疫抑制治療時のIGRAでは、免疫応答の低下による影響を想定し、陰性を過大評価せず、結核の発病リスクを意識した日常診療が求められる。
著者
森兼 啓太
出版者
ヴァン メディカル
巻号頁・発行日
pp.169-174, 2020-07-15

標準予防策と手指衛生 医療現場における感染対策の基本が標準予防策であることは言うまでもない。標準予防策は,微生物が存在する・しないに関わらず実施する対策であり,その中心が手指衛生であることも良く知られている。 手指衛生の重要性を示したのがオーストリアのイグナス・フィリップ・ゼンメルワイスである。彼は産科病棟において出産後の妊婦に発生する産褥熱に,医療従事者などの手指に付着した「何か」が関係していて,手指衛生を行うことで産褥熱を減らせるのではないかと考えた。まだウイルスも発見されておらず,細菌に関しても研究途上であったその時代に,彼は石炭酸による手指衛生を医療従事者に実施させることで,産褥熱を大きく減少させた。後に,産褥熱が細菌によるものであり,手指衛生を行うことで産褥熱の原因となる手指に付着した細菌を消毒し減少させることができる,ということが明らかにされた。この功績を称えて,彼は手指衛生の祖と呼ばれている。