著者
斉藤 仁
出版者
一般社団法人 日本ヘルスケア歯科学会
雑誌
日本ヘルスケア歯科学会誌 (ISSN:21871760)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.11-15, 2019-12-18 (Released:2022-08-27)
参考文献数
6

一般開業歯科診療所に初診で来院する患者の主訴は,過去に治療したことのある歯に起因するものが多いと思われる.実際に初診患者の主訴がどれくらい過去の治療に起因するものかを調べるために,日本ヘルスケア歯科学会の会員のうち,本調査に協力が得られた48歯科医院で2017年9月1日から11月30日までの間に来院した初診患者について,その主訴の原因を調べ,48歯科医院のうち対象期間内でのデータがすべて揃っている20医院の20歳以上の初診患者718人についてまとめた.主訴の原因が過去に治療したことのない歯に起因するものが全体の10 %だったのに対して,治療歴があるものの合計は43 %であり,20歳以上の初診患者は過去の治療の何らかの再治療で歯科医院に来院している可能性が高いことがわかった.
著者
藤木 省三 千草 隆治
出版者
一般社団法人 日本ヘルスケア歯科学会
雑誌
日本ヘルスケア歯科学会誌 (ISSN:21871760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.52-57, 2021 (Released:2022-03-23)
参考文献数
8

歯の喪失の主原因はう蝕およびう蝕関連疾患が高い割合を占めることが報告されており,子どものう蝕予防が重要であることは明らかである.本研究では,12歳まで継続来院をして定期的管理を受けた子どもを対象として,12歳で初めて来院した者と比較分析することで,多施設の歯科医院における子どもの定期的管理におけるう蝕予防効果を検討した.その結果,定期管理群と12歳時初診グループを比較すると,6歳からの継続受診は12歳時のう蝕を増加させない可能性が示唆され,6歳時から定期管理をすることで,かなりう蝕の発生が抑制でき,早い年齢からのう蝕管理が重要であることが明らかとなった.また,定期管理の受診間隔についても分析したところ,定期管理は少なくとも1年ごとに実施する必要があることが示唆された.さらに,6歳時点でのう蝕が多いと将来来院が途絶える可能性が高いことが推測され,6歳でのう蝕が多い場合は定期管理を行うためにより積極的な関わりが必要であることがわかった.
著者
山下 喜久
出版者
一般社団法人 日本ヘルスケア歯科学会
雑誌
日本ヘルスケア歯科学会誌 (ISSN:21871760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.20-26, 2021 (Released:2022-03-23)
参考文献数
16

唾液中には口腔の様々なニッチ(隙間)に由来する細菌種が検出される.歯周ポケットもそのニッチの一つであり,歯周病の進行に伴い,増殖した歯周ポケット特異細菌が唾液中に増加することが考えられる.このような仮説に立ち,唾液を検体として11細菌種からなる歯周ポケット特異細菌の唾液細菌叢中の比率と歯周病との関係を次世代シーケンサーによる解析結果に基づき調べた.その結果,歯周ポケット特異細菌の唾液細菌叢中の比率のカットオフ値を0.139%とすることで,深さ4mm以上の歯周ポケットが10~15部位以上ある歯周病患者を感度0.88,特異度0.7程度で検出できた.これまで,歯周病患者を集団検診の場でスクリーニングする際には,歯周プローブで歯周ポケットの深さを手間と時間を掛けて診査する必要があったが,以上の結果から,従来の歯周病検査に代わって唾液を検体とした細菌検査が歯周病患者の新たなスクリーニング法になることが期待される.