著者
宮本 信也
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.333-339, 2020

教育や訓練・指導と関連して,子どもたちがトラウマ体験をしている状況がある.子どもたちがトラウマを感じるような教育上の対応には,教育虐待と教育ネグレクトがあるが,適切な教育を受ける子どもの権利の侵害という視点に立てば,両者を区別する必要はなく,併せて不適切な教育対応と呼んでもよいように思われる.不適切な教育対応は,特別支援教育において生じやすい可能性がある.保護者や教師の熱意と学習スキルの反復学習による見かけ上の学習成果が見えるからである.一方,教育の場における教える・教わる関係で子どもたちがトラウマを体験する状況としては,部活動における威圧的な指導に注意する必要があるであろう.子どもたちの心の問題に関し,神経発達症とトラウマの2つの視点から考えることが,子どもの心の臨床のみならず,教育分野に限らず,職業として子どもに関わるすべての職種に必要と思われる.
著者
宮本 信也
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.333-339, 2020 (Released:2020-01-06)

教育や訓練・指導と関連して,子どもたちがトラウマ体験をしている状況がある.子どもたちがトラウマを感じるような教育上の対応には,教育虐待と教育ネグレクトがあるが,適切な教育を受ける子どもの権利の侵害という視点に立てば,両者を区別する必要はなく,併せて不適切な教育対応と呼んでもよいように思われる.不適切な教育対応は,特別支援教育において生じやすい可能性がある.保護者や教師の熱意と学習スキルの反復学習による見かけ上の学習成果が見えるからである.一方,教育の場における教える・教わる関係で子どもたちがトラウマを体験する状況としては,部活動における威圧的な指導に注意する必要があるであろう.子どもたちの心の問題に関し,神経発達症とトラウマの2つの視点から考えることが,子どもの心の臨床のみならず,教育分野に限らず,職業として子どもに関わるすべての職種に必要と思われる.
著者
嶺 輝子
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.41-51, 2019 (Released:2019-04-04)
参考文献数
9

このたび,ICD-11において複雑性PTSDが正式な診断基準として採択された.これにより,これまで正しい診断・治療を受けられなかった患者たちが適切な治療を受けられるような基盤が整ったわけだが,今後はその治療をどのように行っていくかが重要課題になるだろう.複雑性PTSDとは,傷を受けやすい幼年期の発達段階において,養育責任を担っている者の加害や放棄による重度のストレス要因に継続的あるいは長期間さらされた結果引き起こされる心的外傷であるが(Courtois et al., 2009),それは長期にわたるストレスだけでなく,単回のトラウマが,その後の不適切なケアや対応によって重症化するケースも含まれうる.小児の精神神経の専門家として,このような複雑性PTSDへの変調を防ぎ,トラウマから回復させるには何が必要なのかを論じたうえで,論者が考案したホログラフィートークという心理療法を子どものケアにどのように利用しうるのかを紹介してみたい.