- 著者
-
中川 陽子
宮本 信也
- 出版者
- 日本健康教育学会
- 雑誌
- 日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.1, pp.15-24, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
- 参考文献数
- 22
目的:本研究は,母親の「イライラ感」に着目し,子どもが泣いたりぐずったりする負の感情表出に対する母親の不適切な対処行動に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした.方法:首都圏の郊外の幼稚園,都市部の幼稚園と保育所の計3施設に在籍する1~6歳の幼児をもつ母親を対象に,2017年4~7月に無記名の自記式質問紙による横断的調査を実施した.回答の得られた687名(回収率57.3%)から無効回答等を除外し,444名を分析対象とした.子どもの育てにくさ,母親の認知様式,特性被援助志向性,被害的認知,イライラ感を点数化し,重回帰分析を行った.結果:子どもの負の感情表出に対する母親の不適切な対処行動に直接的に影響を及ぼす要因は,母親のイライラ感(β=0.32, P<0.001)と子どもの年齢(β=0.18, P<0.001)であった.イライラ感に影響を及ぼす要因は,子どもの育てにくさ(β=0.24, P<0.001)と完璧主義(β=0.17, P=0.001)であった.中でも,被害的認知(β=0.19, P=0.024)と完璧主義(β=0.23, P=0.005)は,イライラ感を高めやすく不適切な対処行動につながりやすいことが明らかになった.結論:母親の認知的要因と不適切な対処行動との間にイライラ感が介在しており,被害的認知及び完璧主義な認知的特性によってイライラ感が高まると,不適切な対処行動につながりやすいことが示唆された.母親がイライラ感を統制できるよう,認知的特性を踏まえた介入方法を検討することが重要である.