- 著者
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藤谷 泰
- 出版者
- 京都府立久御山高等学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2008
報告者はこれまでに高等学校で「DNA塩基配列を用いた植物の同定と進化の解明」という授業を実施してきた。この授業では、植物のDNAの抽出から遺伝子の増幅、その塩基配列の決定から分子系統樹の作成を主眼としつつ、植物の観察同定、実体顕微鏡下での外部形態の観察を加えた内容を実施してきた。この授業の中で最大の課題は、「PCR増幅をいかに成功させるか」であった。授業を円滑に実施し、生徒に大きな達成感を抱かせるには、何としても生徒がサンプルにした植物の塩基配列の解読に成功する必要がある。これまでの経験上、PCRに成功しなかったサンプルは、ターゲットにしている遺伝子を内部プライマーを用いて2分割してPCR増幅させるとうまくいく場合が多かった。塩基配列が短いほどPCRが成功する確率が飛躍的に増大するようだ。そこで本研究では、植物系統分類学で用いられる遺伝子の汎用内部プライマーを開発することを目的とした。(1) プライマー設計の対象とする遺伝子は、植物系統群類学で用いるrbcLをターゲットとした。設計はprimer3 plusを使用して行なった。(2) 最初に設計したのは、過去の取り組みの中でrbcLを2分割してシーケンスしてきたが、2分割のつなぎ合わせの部分が読み取りにくい場合が多かったので、その部分をカバーするプライマーの設計を行なった。(3) 次に、rbcLは1400塩基程度なのでこれを4~6分割して読み取りができるようにプライマーを設計した。(4) 過去の実験でPCR増幅に成功してきているDNA抽出サンプル16種類(シダ、裸子、被子植物)を用いて、設計したプライマーのPCR成功率をスクリーニングした。(5) 成功率の高いプライマーを用いて、これまでのプライマーではPCR増幅ができなかったサンプルのPCR増幅を行なった。以上の結果、すべての植物に対応できるプライマーの開発はできなかったが、設計したプライマーを用いてPCR増幅を数種類テストすれば、これまで解読できなかったサンプルについても、解読できることがわかった。今後、このプライマーを用いて標本庫等の古いサンプル等にも適用して、実用化を検討する予定である。