著者
川村 覚昭
出版者
京都産業大学教職課程講座センター
雑誌
京都産業大学教職研究紀要 (ISSN:18839509)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-29, 2008-03

今日、我が国の人間形成は、不透明感を増している。このため、教職教育の原理も明確ではないが、それは、近代教育を支えている思惟構造に根本的な原因があると考えられる。その思惟構造は、基本的に近代世界を支えるものであり、教育によって強化されていくが、本稿では、その思惟構造と、それを生み出す背景、即ち文化に注目して近代の人間形成の問題を明らかにした。 その際、現代哲学の重要な方法論である現象学を使い、我が国の近代化の過程で忘却されてきた東洋的思惟、特に西田哲学が明らかにした主客未分の論理が、これからの人間形成と教職教育を考える重要なファクターになることを明らかにした。
著者
西川 信廣 前馬 晋策
出版者
京都産業大学教職課程講座センター
雑誌
京都産業大学教職研究紀要 (ISSN:18839509)
巻号頁・発行日
no.1, pp.47-61, 2006-03

1999年に制定された「地方分権一括法」により、教育行政の地方分権化も促進される事が期待されている。しかし、実態は行政的分権のレベルに留まり、財政的分権、立法的分権は遅々として進まないという現状である。教育改革が学校レベルまで浸透したものになりにくいことの理由の一つがここにある。 教育、とりわけ義務教育は本来地域と子どもの実態に応じた柔軟で創意工夫溢れるものでなければならない。そのためには、地方政府のリーダーシップに基づく地方による地方のための改革が進められる必要がある。本論は、大阪府摂津市の教育改革への取組を取り上げ、教育改革における地方教育委員会の果たしうる役割について考察する事を目的としている。摂津市は教育長のリーダーシップのもと、「せっつ・スクール広場」「学校経営研究会(管理職対象)」「教育フォーラム」「学力実態調査」等々の施策を展開し、積極的な教育改革を展開している。取組から3年を経過した現在は、それらの取組の成果に対する評価(check)の段階でもある。 摂津市と京都産業大学は平成 16年3月に包括連携協定を締結し、摂津市立小中学校の教員研修や校内研修会への本学教員の派遣や、摂津市教育委員会指導主事による本学教職課程履修者に対する講座開催等の協力関係が構築されている。本論もその連携活動の一環に位置付くものである。本論は5章構成であり、第1章、第5章は西川信康が、第2章、第3章、第4章は前馬晋策がそれぞれ分担執筆した。
著者
ギリス・フルタカ アマンダ・ジョアン
出版者
京都産業大学教職課程講座センター
雑誌
京都産業大学教職研究紀要 (ISSN:18839509)
巻号頁・発行日
no.4, pp.17-40, 2009-03

世界中の学校でいじめはおきている。近年メディアでは、日本の学校における行き過ぎたいじめの事例が大きな注目を集めている。子供たちがいじめを行う原因は多くある。日本のように集団と同ーの基準をもつことが求められる集団的社会で、最もー般的ないじめの対象は、多数派とは明らかに違う子供である。外国人労働力の規模拡大と国際結婚の増加に伴い、民族的、文化的、言語的に日本人の同級生とは異なる背景をもつ子供の割合が増加している。こうした子供たちは、日本の学校の生徒、教師集団、管理運営の中で、おのずといじめの対象になる。本稿は2007年9月に行われたフォーラムで紹介された証拠と、新規に立ち上げられたネットワーク「いじめゼロ」で収集された証拠に基づいて、現在のいじめ状況を検証するものである。著者は人種の違いへの理解を深め、寛容さをはぐくみ、非日本人生徒を対象とするいじめ傾向を減らすために、いくつかの教育上のアプローチと教材を推薦する。