- 出版者
- 写
- 巻号頁・発行日
- 1597
書名は通称による。巻頭には「玉塵」とのみある。帝国図書館で付した題簽は「玉塵抄」。漢籍『韻府群玉』の講釈(仮名抄)。ただし、第七「陽」韻までで全体の約三分の一。講義筆記の体裁で、当時の口語を反映し、内容も豊富で国語学資料として重視されている。書中の記述から講述者は惟高妙安(1480-1567)と考えられる。巻頭に「永禄六〔1563〕亥二月廿五資始」とあるのは講義の開始日とされるが、妙安の没年まで間がないので、本書全体にわたる講義が実際に行われたのではなく、直接執筆したものかとする見解もある。本写本は最終冊後ろ見返しに慶長2年(1597)の奥書があり、多くの分担書写になる。他の伝本に叡山文庫所蔵本(55冊)、東京大学国語研究室所蔵本(残欠本12冊)がある。本写本と叡山文庫本とは内容的にはほぼ同じく、巻7、9、52については、叡山本は本写本を親本とする写本の転写とされる。他の巻についても、共通の親本の存在が推測されている。『韻府群玉』は元の陰時夫撰。20巻。韻によって排列した類書(一種の百科事典)で作詩のための韻書も兼ねる。本書が拠ったのは元の元統2年(1324)刊の増修本の系統(五山版または朝鮮刊本か)である。講述者惟高妙安は室町時代の禅僧。相国寺90世となる。各冊巻頭に「米沢蔵書」「明治八年文部省交付」印がある。米沢藩に伝えられたもので、明治8年に文部省が旧藩校の蔵書を当館の前身東京書籍館の蔵書とするために提出させたうちの一つ。