著者
籏本 恵介 土田 芳彦 辻 英樹 川上 亮一
出版者
北海道整形外科外傷研究会
雑誌
北海道整形外科外傷研究会会誌 = The Journal of Hokkaido Orthopaedic Traumatology Association (ISSN:09146083)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.57-62, 2004-03-31

横紋筋融解症は様々な原因により生じる筋肉組織破壊とその結果生じる二次的なtoxemiaの状態である. 外因性, 内因性に関わらず, 筋組織の崩壊を示す言葉である. Crush injuryは圧挫による局所の損傷を意味するが, Crush Syndromeは崩壊した細胞より放出される細胞毒性物質により生じる全身症状を示す. 従って, 外因性の横紋筋融解症はCrush Syndromeの一部と考えられる. 骨折はなくても, 外因性の横紋筋融解症では軟部組織の腫脹と皮膚の壊死あるいは神経症状を合併するため, 受傷初期には整形外科疾患として取り扱われることが多い. そして全身状態あるいは血液データ上異常が認められた場合, 全身管理目的に三次医療施設へ搬送されることになる. 今回我々は, 1999年1月より2003年6月までに経験した28例の横紋筋融解症に対して, 原因とその治療法について検討し報告する。
著者
新井 隆太 加藤 竜男 西池 修
出版者
北海道整形外科外傷研究会
雑誌
北海道整形外科外傷研究会会誌 = The Journal of Hokkaido Orthopaedic Traumatology Association (ISSN:09146083)
巻号頁・発行日
no.24, pp.76-80, 2008-03-31
被引用文献数
1

大腿骨頚部骨折に対しHannson pin を用いた骨接合術術後に,大腿骨転子下骨折を生じた2例を経験した.症例1は74歳女性.Hannson pin により大腿骨頚部内側骨折骨接合術を行い術後7日目に転倒し,遠位ピン刺入部で骨折を認め,Hannson pin を抜去しEnder 釘による骨接合術を施行した.症例2は42歳男性.Hannson pin による骨接合術を行い,術後6週にトイレでかがんだ際に大腿部痛を自覚し,遠位ピン刺入部で骨折を認めた.Hannson pin を抜去しEnder 釘による骨接合術を再度施行した.症例1では骨脆弱性が基盤にあり,転倒によりHannson pin 刺入部の大腿骨外側骨皮質欠損部に外力が集中し,転子下骨折が生じたと考えられた.症例2では股関節屈曲時に,腸腰筋収縮による応力がHannson pin 刺入部およびガイドピン打ち直しにより生じた大腿骨外側骨皮質の骨脆弱部に集中し,骨折したと考えられた.Hannson pin による骨接合術では,刺入部の大腿骨外側骨皮質の強度を低下させる原因となるガイドピンの打ち直しを避ける必要があると考えられた.また,骨粗鬆症の程度が強い症例では荷重を遅らせるなどの術後リハビリテーションの工夫が必要であると思われた.
著者
青木 光広 佐々木 敏之 藤田 珠美
出版者
北海道整形外科外傷研究会
雑誌
北海道整形外科外傷研究会会誌 = The Journal of Hokkaido Orthopaedic Traumatology Association (ISSN:09146083)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.53-55, 2007-03-31

本報告では,示指 MP 関節に捻りの加わる外傷を受け,MP 関節屈曲時に中指と重なるクロスフィンガーを呈した40歳女性症例を紹介する.手術で示指 MP 関節橈側側副靭帯の断裂が確認され,靭帯の縫合術で症状は軽快した.指 MP 関節の側副靭帯損傷はスポーツで発生する事が多く陳旧性となることがある.クロスフィンガー変形を呈することはまれである
著者
新井 学 倉田 佳明 磯貝 哲 高橋 信行 橋本 功二 平山 傑 土田 芳彦 村上 裕子 辻 英樹 井畑 朝紀 成田 有子
出版者
北海道整形外科外傷研究会
巻号頁・発行日
2010

肘頭骨折を合併した小児上腕骨外顆骨折の2例を経験した。【症例1】7歳男児,遊具から転落受傷し,上腕骨外側顆骨折はJacob 分類stageⅢ,肘頭骨折は2mmの転位であった。両骨折に対し観血的骨接合術を施行した。【症例2】4歳男児,ソファーから転落受傷し,上腕骨外顆骨折はJacob 分類stageⅡ,肘頭骨折は転位がわずかであった。右上腕骨外側顆骨折に対し観血的骨接合術を施行した.肘頭骨折は保存的加療とした。2症例とも骨癒合が得られ可動域制限なく経過良好である。肘頭骨折に上腕骨外側顆骨折が合併する受傷機転として,肘関節伸展位で内反および外反力が関与し,上腕骨外側顆骨折を合併した肘頭骨折は比較的稀であるが,見逃されると機能障害を残すため認識しておくべき損傷形態である。
著者
中島 菊雄 徳谷 聡 塩崎 崇
出版者
北海道整形外科外傷研究会
巻号頁・発行日
2006

外傷により大腿骨内側顆に大きな骨軟骨欠損を生じた症例に対して Outerbridge の方法に準じて自家膝蓋骨外側1/3を移植骨として使用して再建を行った.症例は47歳男性で,自動車運転中の事故で右大腿骨骨幹部骨折,右大腿骨内側顆部の骨軟骨欠損を伴う膝開放損傷,左足 Lisfranc 関節脱臼骨折,左肋骨骨折を受傷した.内側顆の欠損は3×2.5×6 cm であった.同日,右膝創洗浄,大腿骨創外固定,左足整復ピンニング施行.感染がないことを確認し,受傷後21日に右大腿骨髄内釘固定,膝蓋骨,腸骨移植による膝関節形成術を行った.Screw 刺入部痛を強く訴え,術後1年で抜釘を行った.膝可動域は0/120°であり,杖なし歩行可能であるが,疼痛の訴えが残っており,肉体労働へは復職できていない.早期に変形性膝関節症を発症し,TKA が必要となる可能性を残しており,今後も注意深い観察が必要である