- 著者
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山部 こころ
- 出版者
- 国立療養所大島青松園
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2010
等温遺伝子増幅法の一つであるLAMP (loop-mediated isothermal amplification)法を応用して、日和見感染菌(metallo-β-lactamase保有緑膿菌、バンコマイシン耐性腸球菌:VRE)の検査法を確立することを目的として研究を行い、以下の成果を得た。1.vanAならびにvanB遺伝子増幅のためのLAMPプライマーの設計薬剤耐性遺伝子(vanA, vanB)を標的として、LAMP反応に必要な4種類のプライマーをPrimer Explorer (Fujitsu : version 4)を用いて設計した。2.検出感度試験設計したLAMPプライマーを使用したLAMP反応によってvanAならびにvanB遺伝子の検出感度を調べた。その結果、LAMP法による両遺伝子の検出感度は既報のPCR法よりも高いことが明らかとなった(10 cells/tube)。また、遺伝子増幅に要する時間は40分であり、PCR法に比べて、大幅に検査時間を短縮できる可能性が示された。さらに、遺伝子の増幅を目視によって簡易判定できることが示された。3.特異度試験設計したプライマーの特異性はVREの臨床分離株80株と、関連細菌18種を使用して行った。この結果、LAMP法は従来のPCR法と同レベルの特異性をもつことが明かとなった。以上の結果からLAMP法をVREの検出、遺伝子型検査に臨床応用した場合、検出感度、特異性、迅速性と簡便性に優れた検査となる可能性が示された。4.LAMP法によるmetallo-β-lactamase遺伝子の増幅VIMならびにIMP遺伝子についてLAMPプライマーを設計し、遺伝子の増幅を試みた。その結果VIMについては遺伝子増幅を確認することができたが、IMPについては遺伝子が増幅しなかった。IMP遺伝子は多型性があり、プライマーの設計を再考する必要性がある。