著者
山部 こころ 苔口 進 前田 博史
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.463-470, 2010-07-01 (Released:2011-09-07)
参考文献数
18

口腔内に生息するメタン生成古細菌 (Methanobrevibacter) が歯周病(歯槽膿漏)の病態に関与していることが示唆されるようになった.古細菌には,膜脂質や抗原分子において,真正細菌にはない特徴がある.これまで,歯周病の病態はグラム陰性桿菌を主体とした,いわゆる歯周病原細菌の感染とそれらに対する免疫応答から説明されていた.メタン生成古細菌の参戦によって,歯周病の病態がこれまでにはない側面から解明される可能性がでてきた.
著者
山部 こころ
出版者
国立療養所大島青松園
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

等温遺伝子増幅法の一つであるLAMP (loop-mediated isothermal amplification)法を応用して、日和見感染菌(metallo-β-lactamase保有緑膿菌、バンコマイシン耐性腸球菌:VRE)の検査法を確立することを目的として研究を行い、以下の成果を得た。1.vanAならびにvanB遺伝子増幅のためのLAMPプライマーの設計薬剤耐性遺伝子(vanA, vanB)を標的として、LAMP反応に必要な4種類のプライマーをPrimer Explorer (Fujitsu : version 4)を用いて設計した。2.検出感度試験設計したLAMPプライマーを使用したLAMP反応によってvanAならびにvanB遺伝子の検出感度を調べた。その結果、LAMP法による両遺伝子の検出感度は既報のPCR法よりも高いことが明らかとなった(10 cells/tube)。また、遺伝子増幅に要する時間は40分であり、PCR法に比べて、大幅に検査時間を短縮できる可能性が示された。さらに、遺伝子の増幅を目視によって簡易判定できることが示された。3.特異度試験設計したプライマーの特異性はVREの臨床分離株80株と、関連細菌18種を使用して行った。この結果、LAMP法は従来のPCR法と同レベルの特異性をもつことが明かとなった。以上の結果からLAMP法をVREの検出、遺伝子型検査に臨床応用した場合、検出感度、特異性、迅速性と簡便性に優れた検査となる可能性が示された。4.LAMP法によるmetallo-β-lactamase遺伝子の増幅VIMならびにIMP遺伝子についてLAMPプライマーを設計し、遺伝子の増幅を試みた。その結果VIMについては遺伝子増幅を確認することができたが、IMPについては遺伝子が増幅しなかった。IMP遺伝子は多型性があり、プライマーの設計を再考する必要性がある。