著者
飯田 直樹
出版者
地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、小河滋次郎の児童保護に関する主張に光を当て、それが小河の社会事業思想の中核にあることを示す。その上で、その思想が具体化されたのは、小河が立案した方面委員制度よりも、むしろほとんど小河とは無関係と考えられていたセツルメントであること、また、小河の思想の影響を受けて、幼児保育がセツルメントの中心事業になることを明らかにする。さらに、小河の影響が、セツルメントを介して都市での露天託児実践や農村での農繁期託児所という領域にまで及ぶ事を示し、小河の思想に新たな意義を見出す。日本における福祉国家化が、児童保護の分野を軸に進行することを明らかにし、医療偏重の福祉国家史の刷新を目指したい。