著者
馬場 康治
出版者
大阪市立大学文学部地理学教室
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.5, pp.10-36, 2000
被引用文献数
1

1. はじめに : 1.1. 問題の所在 : 日本における外国人労働者受け入れの基本方針は、「専門的な技術、技能又は知識を生かして職業活動に従事する外国人の入国・残留は認めるが、これら以外の外国人労働者(いわゆる単純労働の分野で働く外国人)の入国・残留は認めない」というものである。その根拠は、日本の「出入国管理及び難民認定法」(以下、入管法)に定められた、日本に入国・在留する外国人の必要とする在留資格に求められる。……
著者
加藤 政洋
出版者
大阪市立大学文学部地理学教室
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.6, pp.51-58, 2001
被引用文献数
1

I はじめに : (1)課題 : 1935年に編まれた『大阪市域拡張史』には、大正期に形成された大阪市街地北部に位置する豊崎町について「大小二百有余の工場軒を並べ、煤煙天を覆ふの盛況を呈し、工場都市北大阪の大を誇るの観があった」、同じく南部に位置する今宮町についても、「其の状態全く市内と異らず、人口七万五千四百余人、戸数一万八千四百を有する全国著名の大町」であると記されている。このように近代都市大阪を工業都市として表象する場合、工場と煤煙、そして戸口の規模は誇るべき特徴になる。だが、ひるがえって、当時の市政の枢要を占めていた社会事業の点からみた場合、どちらの地区も「不衛生住宅地区」や「過密住宅地区」として表象され改善されるべき事業対象であった。実際に、今宮町に位置し、現在では日本最大の「寄せ場」として知られている「釜ヶ崎」については、「五十戸の安宿が軒を並べ、之に止泊する日稼労働者五千人を超へ、社会施設の急愈々切なるものがあった」とも記されているのである。「寄せ場」には日雇い労働者のための簡易宿泊所(ドヤ)が集中的に立地しているが、さきの昭和戦前期の記述にも見られるとおり、戦前の「釜ヶ崎」には、「日稼労働者」のための「安宿」と呼ばれる日払いを原則とした「木賃宿」を指す宿泊施設が多数存在していたようである。……