- 著者
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野村 玄
- 出版者
- 大阪青山短期大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本年度は、まず宮内庁書陵部・東京大学史料編纂所・東京都立中央図書館特別文庫室において史料調査を行った。宮内庁書陵部では、貞享度大嘗会に関する史料を収集するとともに、写真撮影・複製を行った。東京大学史料編纂所では、同所所蔵の「備後福山阿部家文書」のうち、京都所司代の職掌日記を調査した。虫損が甚だしかったが、同所と協議し、写真複製が可能なものについて撮影・複製を行った。東京都立中央図書館特別文庫室では、同室所蔵の「木子文庫」について調査し、とくに近世の天皇の葬送儀礼に関する史料について写真撮影・複製を行った。また、史料調査の他に、「天子御作法」の具体像を明らかにする観点から、宮内庁侍従長の許可を得て、東山御文庫に保管されている『後桃園天皇宸記』について翻刻作業を開始した。先行研究によると、後桃園天皇は内廷関係と外廷関係に分けて日記をつけていたことが判明しているが、その内容についてはこれまで具体的な検討がなされてこなかった。本研究では、裁可の際の天皇の発言内容や作法、議奏への指示内容などが克明に記された外廷関係の日記から順に翻刻を開始することとした。その結果、第1回めの翻刻作業において、天皇の発言は案件毎に決められていたこと、なかでも官位叙任申請に対しての「留置」という発言が天皇の権能を考える上で重要であること、天皇に披露される文書様式に「四ツ折」と称されるものがあることなどが明らかとなった。この『後桃園天皇宸記』のほか、『桃園天皇宸記』についても翻刻作業を進めていき、近世の天皇の所作・作法について原則を見出すことができればと考えている。