著者
浅利 宙
出版者
宇部フロンティア大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今年度は、「比較」を意識しながら、1)遺族支援に関する文献研究(遺族支援の考え方と海外や国内の支援動向の特徴を把握する)、2)遺族支援グループに対する参与観察調査、3)グループの加入者に対する調査の3つを実施した。1)死別によって悲嘆状態に陥った人を同様の経験をした遺族がケアする一連の活動を「遺族間相互支援プログラム」という。海外では遺族への個別訪問活動が少なくないようであるが、わぶ国の場合は、医療・看護専門職による遺族会の組織化活動、ならびに、遺族等によって形成された遺族支援グループによる諸活動が多くを占めるというプログラム展開上の特徴が指摘できる。2)昨年度からの遺族支援グループに対する参与観察を今年度も継続して実施した。特記すべきなのは、参与観察している遺族支援グループが、従来の遺族支援活動に加えて、社会に向けた情報発信活動を展開した点である。参与観察を継続していた遺族グループでは、加入者を対象に在宅看護調査を実施し、その結果を関連の研究会にて報告した。これらの一連の動きは、同様の多くの遺族支援グループが活動展開に悩みをもつなかで、立ち上げ→組織化に引き続く展開のあり方として参考事例になるであろう。3)在宅看護調査からは、終末期の在宅看護では同居家族が看護の中心となるが、特に配偶者との二人暮らしの場合は別居家族(親族)のサポートが大きな意味をもつことが分かった。また、インタビュー調査による事例の比較からは、終末期のあり方は個別性が強いにもかかわらず、家族に対する病状の適切な説明が多くの患者・家族に共通するニーズであることを確認できた。特に終末期のあり方は、看取りの過程にとどまらず、看取り後の遺族の立ち直り過程にも大きな影響を与えている。これらの「声」を集約するところに、遺族支援グループのもつ社会的意義を指摘することができる。