著者
永吉 雅人 杉田 収 橋本 明浩 小林 恵子 平澤 則子 飯吉 令枝 曽田 耕一
出版者
室内環境学会
雑誌
室内環境
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.97-103, 2013-12-01

上越市立の全小学校(新潟県)児童を対象に、化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity:MCS)様症状に関するアンケート調査が2005年7月に実施されている。今回、その調査から5年経過した2010年7月、実態の時間的推移を把握するため、対象を市立の全小中学校の児童・生徒に拡げてアンケートの再調査を実施した。また今回新たに就寝時刻についても合わせて調査した。アンケートの有効回答数は14,024名(有効回答率84.0%)であった。/調査の結果、14,024名の回答児童・生徒中MCS様症状を示す児童・生徒は1,734名(12.4%)であった。今回の調査で主に、次の3つのことが明らかとなった。/1.小学1年生から中学3年生へ学年が進むに伴い、MCS様症状を示す児童・生徒の割合が増加傾向にあった。2.小学生全体のMCS様症状を示す児童の割合は、今回調査した小学生の方が5年前に比べて大きくなっていた。3.小学3年生から中学3年生までのMCS様症状を示す児童・生徒はMCS様症状を示していない児童・生徒より就寝時刻が遅かったことが明らかになった。
著者
牧野 国義
出版者
室内環境学会
雑誌
室内環境学会誌 (ISSN:21864314)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.27-34, 2003-09-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
7

室内環境問題について全国の自治体における取り組みの現状を把握するために,47都道府県,11政令指定都市,23特別区における室内環境問題の健康対策と住民対策のそれぞれの担当者を対象とするアンケート調査を行い,これらの自治体を5地域にグループ化して集計した。まず,健康対策について,全国自治体の約50%が2000年度までにシックハウス対策に取り組んでいるが,その半数以上は年間50件以下で,都市型地域に集中した。化学物質過敏症対策に取り組んでいる自治体は約20%であった。実施した主な対策は,パンフレットの配布,相談・苦情を聞くこと,室内環境調査を行うことであった。対象とする主な物質は,ホルムアルデヒド,VOCで,ダニ・カビがこれに次いだ。室内環境問題への相談窓口は全国自治体の約60%が設置し,都市型の地域ほどその割合が高かった。ただし,専門家が担当せず,協力機関も室内環境学会などの専門機関が関わっていなかった。次に,住民対策では,都市型地域で相談・苦情の受付や件数が多く,現在急増していた。その内容の多くは新築や増改築による体調不調,不快臭気によるものであった。経験年数が一般に短い行政担当者の室内環境問題に関する知識は職場内伝達や書籍によるところが大きく,室内環境学会の寄与は小さかった。室内環境学会の期待される役割として,情報提供や啓蒙活動,および専門家として相談窓口になることなどが多く寄せられた。以上の結果から,室内環境学会が行政に対してより積極的にアプローチする必要性が示唆された。
著者
吉田 精作 田口 修三 堀 伸二郎
出版者
室内環境学会
雑誌
室内環境学会誌 (ISSN:21864314)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.7-15, 2004 (Released:2012-10-29)
参考文献数
36

シロアリ防除家屋における有機リン系殺虫剤クロルピリホスと有機塩素系共力剤S-421のヒト曝露の程度についての研究を, 空気および貯蔵米中残留レベルを調査することにより行った。防除処理後5年間の調査結果は既に報告した。今回, 防除処理後5~7年間(家屋B)と5~9年間(家屋F)の空気および貯蔵精白米中クロルピリホスとS-421レベルを報告する。家屋Bリビング空気中のクロルピリホスとS-421濃度はそれぞれ0.005~0.09μg/m3, 0.15~1.03μg/m3の範囲であった。家屋F和室空気中のクロルピリホスとS-421濃度はそれぞれ0.05~0.11μg/m3, 0.01~0.02μg/m3の範囲であった。室内空気中防除剤濃度は季節変動し, 夏期に高く, 冬期に低かった。貯蔵精白米中防除剤濃度は空気中濃度を反映して変動した。家屋Bの室内空気中クロルピリホスとS-421濃度は夏期においては7年間減少せず, 家屋Fにおけるそれらの濃度は防除後9年間で若干の低下傾向を示した。