著者
竹熊 美貴子 大村 厚子 斉藤 貢一
出版者
Society of Indoor Environment, Japan
雑誌
室内環境学会誌 (ISSN:21864314)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.35-39, 2005
被引用文献数
4

学校施設における室内空気中化学物質濃度の低減化対策として, 換気による効果を確かめる実験を行った。すなわち, 埼玉県内の工業高校を調査対象施設として, 夏季の長期休暇期間中に, 教室内空気中化学物質濃度を換気の前後で測定する方法で行った。<BR>測定した5教室(4普通教室, 1実習室)のうち4教室(3普通教室, 1実習室)から室内濃度指針値を超えるホルムアルデヒドが検出された。その後, 10分間の自然換気を行った普通教室では, ホルムアルデヒド濃度は72%減少し, 室内濃度指針値未満となった。また, アセトアルデヒド濃度も50%減少していた。一方, 窓のない実習室においても, 扇風機を使用した機械換気を行うことでアルデヒド類を低減させることができた。<BR>揮発性有機化合物 (VOC) について, 普通教室では測定対象とした46物質中15~17物質が検出され, 実習室では21物質が検出された。しかし, 換気後, それぞれの教室内気中VOC濃度は換気前に比べて著しく減少し, 2~5物質が検出されたのみであった。この結果, 総揮発性有機化合物 (TVOC) として, 換気により約80~90%の減少であった。
著者
牧野 国義
出版者
室内環境学会
雑誌
室内環境学会誌 (ISSN:21864314)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.27-34, 2003-09-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
7

室内環境問題について全国の自治体における取り組みの現状を把握するために,47都道府県,11政令指定都市,23特別区における室内環境問題の健康対策と住民対策のそれぞれの担当者を対象とするアンケート調査を行い,これらの自治体を5地域にグループ化して集計した。まず,健康対策について,全国自治体の約50%が2000年度までにシックハウス対策に取り組んでいるが,その半数以上は年間50件以下で,都市型地域に集中した。化学物質過敏症対策に取り組んでいる自治体は約20%であった。実施した主な対策は,パンフレットの配布,相談・苦情を聞くこと,室内環境調査を行うことであった。対象とする主な物質は,ホルムアルデヒド,VOCで,ダニ・カビがこれに次いだ。室内環境問題への相談窓口は全国自治体の約60%が設置し,都市型の地域ほどその割合が高かった。ただし,専門家が担当せず,協力機関も室内環境学会などの専門機関が関わっていなかった。次に,住民対策では,都市型地域で相談・苦情の受付や件数が多く,現在急増していた。その内容の多くは新築や増改築による体調不調,不快臭気によるものであった。経験年数が一般に短い行政担当者の室内環境問題に関する知識は職場内伝達や書籍によるところが大きく,室内環境学会の寄与は小さかった。室内環境学会の期待される役割として,情報提供や啓蒙活動,および専門家として相談窓口になることなどが多く寄せられた。以上の結果から,室内環境学会が行政に対してより積極的にアプローチする必要性が示唆された。
著者
阿部 恵子
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境学会誌 (ISSN:21864314)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.41-50, 1998-12-25 (Released:2012-10-29)
参考文献数
14
被引用文献数
3

冷房時のエアコンおよび住宅内部環境のカビ指数を調査した。カビ指数とは, カビをバイオセンサーに用いることにより調査箇所におけるカビ発生の可能性を評価するものである。冷房期間中, 室内はカビの育ちにくい環境になったが, エアコン吹出口は常に高いカビ指数が検出されカビの育つ環境であった。エアコン内部は吹出口よりもさらに高いカビ指数を示し, 著しくカビが成長しやすい環境になった。そこで, 住宅で使用していたエアコンを汚染するカビについて調査した。エアコン内部はカビ汚染が肉眼で観察できる状態で, クラドスポリウムが寡占種になっていた。汚染されたエアコンを通過した空気中から高頻度でクラドスポリウムが分離されたが, 新しいエアコンから吹き出される空気中にはカビがほとんど含まれなかった。冷房時にエアコン内部がカビの育ちやすい環境を保つことによりエアコン内部でカビが増殖し, その胞子がエアコン通過空気に載って室内に飛6散し, エアコンが室内空気の汚染源になることが明らかである。
著者
雨谷 敬史 大浦 健 杉山 智彦 房家 正博 松下 秀鶴
出版者
Society of Indoor Environment, Japan
雑誌
室内環境学会誌 (ISSN:21864314)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.35-43, 2000
被引用文献数
4

1999年8月に, 富士市の一般家庭の室内外のアルデヒド濃度調査を行った。サンプリングはSep-Pak XPoSureを用いたアクティブサンプリングにより行った。得られたサンプルはジクロロメタンによる抽出, アセトニトリルへの溶媒転換, HPLCを用いた分離分析法によりアルデヒド・ケトンの多成分同時分析をおこなった。本法は, 環境大気や室内空気中のホルムアルデヒド, アセトアルデヒドなど11種類のアルデヒド・ケトンを検出・定量するのに有効であることを認めた。ホルムアルデヒドをはじめとする調査対象アルデヒド・ケトンは, すべて, 屋外より室内の濃度の方が高かった。ホルムアルデヒドは新築住宅内で濃度が高く, ホルムアルデヒドなど9種のアルデヒド濃度は, じゅうたんやフローリングの部屋に比べて畳敷きの部屋で濃度が低かった。厚生省による室内環境中のホルムアルデヒド濃度指針値100μg/m<SUP>3</SUP>(30分間)を超えた家庭は2家庭(全体の10%)であった。また, 室内の10種のアルデヒド濃度間には有意な相関が見られた。
著者
吉田 精作 田口 修三 堀 伸二郎
出版者
室内環境学会
雑誌
室内環境学会誌 (ISSN:21864314)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.7-15, 2004 (Released:2012-10-29)
参考文献数
36

シロアリ防除家屋における有機リン系殺虫剤クロルピリホスと有機塩素系共力剤S-421のヒト曝露の程度についての研究を, 空気および貯蔵米中残留レベルを調査することにより行った。防除処理後5年間の調査結果は既に報告した。今回, 防除処理後5~7年間(家屋B)と5~9年間(家屋F)の空気および貯蔵精白米中クロルピリホスとS-421レベルを報告する。家屋Bリビング空気中のクロルピリホスとS-421濃度はそれぞれ0.005~0.09μg/m3, 0.15~1.03μg/m3の範囲であった。家屋F和室空気中のクロルピリホスとS-421濃度はそれぞれ0.05~0.11μg/m3, 0.01~0.02μg/m3の範囲であった。室内空気中防除剤濃度は季節変動し, 夏期に高く, 冬期に低かった。貯蔵精白米中防除剤濃度は空気中濃度を反映して変動した。家屋Bの室内空気中クロルピリホスとS-421濃度は夏期においては7年間減少せず, 家屋Fにおけるそれらの濃度は防除後9年間で若干の低下傾向を示した。