著者
吉原 俊博 加我 正行 小口 春久
出版者
小児歯誌
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.773-777, 1997

口腔内に潜伏する単純ヘルペスウイルスの検出を目的として,本学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した,口腔内に疱疹性歯肉口内炎および口唇ヘルペスを発症していない健常児241名(年齢0歳2か月~14歳8か月)の唾液を採取して検体とし,PCR法を用いてHSVの検出を行い,以下の結果を得た。<BR>1)検体試料採取時,口腔内に疱疹性歯肉口内炎および口唇ヘルペスを発症していない健常児を対象としたにもかかわらず,被験児唾液中から17.0%の割合でHSVが検出された。<BR>2)年齢別のHSV検出率では,0歳および1歳において0%であり,2歳以降においてほぼ一定の検出率であった。<BR>3)兄弟姉妹の間の潜伏状況を調べると,兄弟姉妹全員がHSV(+)である群と兄弟姉妹のうち少なくとも1人がHSV(+)である群との間に有意差はなかった。
著者
松原 まなみ 仲岡 佳彦 中島 謙二 田村 康夫 吉田 定宏
出版者
小児歯誌
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.201-207, 1996-03-25
参考文献数
16
被引用文献数
2

吸啜時の顎および舌による乳首の圧搾動作の有無と吸引圧の違いによる各種人工乳首使用時の哺乳量の差を明らかにする目的で吸啜ロボットによるシミュレーション実験を行った。その結果,以下の結論を得た。<BR>1)吸引動作による吸引量は乳首によってかなり差があり,さらに圧搾動作が加わると特徴的な差異が認められた。<BR>2)ビーンスターク&reg;は吸引動作のみでは最も吸引量が少なかったが,圧搾動作が加わると吸引量は激増して最高値を示した。他の乳首は圧搾動作の有無による差はほとんどなかった。<BR>3)吸引動作のみ,圧搾動作を伴う場合ともに吸引量の多かったのはビジョン&reg;Mサイズ,ヌーク&reg;S・Mサイズ,チュチュ&reg;,ビジョン&reg;Sサイズの順であった。<BR>4)丸穴乳首は自然流出量が多く,クロスカット乳首では自然流出は認められなかった。
著者
室賀 麗 遠藤 圭子 杉本 久美子
出版者
小児歯誌
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.407-414, 2008

歯科保健医療の専門家が,どの程度児童虐待に関する義務等について認識しているかを明らかにし,その児童虐待防止・早期発見における役割を検討するため,歯科診療所の歯科医師,歯科衛生士と保健所等の歯科衛生士にアンケート調査を行った。<BR>その結果,児童虐待について関心を有する者の割合は,保健関係歯科衛生士100%,歯科医師93.6%,診療所歯科衛生士69.6%であり,診療所歯科衛生士は他群より関心度が低かった。児童虐待に関する情報源について,診療所歯科衛生士では「学生時代の授業」という回答が多く,卒業後知る機会が少なかったと推察された。また,児童虐待の通告義務について知っている者は,保健関係歯科衛生士で81.1%,歯科医師で66.0%,診療所歯科衛生士で44.9%であり,診療所歯科衛生士で認知度が低かった。通告義務に関して,守秘義務違反に問われないことを知っている者は多かったが,立証責任がないことを知っている者は少なかった。<BR>実際に虐待が疑われるケースの経験がある者は,保健関係の歯科衛生士で73.0%であったのに対して,歯科医師で36.2%,診療所歯科衛生士ではわずか4.4%であった。さらに,経験を有する歯科医師のうち76.5%が通告しておらず,通告時に不安を感じることが一要因と推測された。また,虐待防止にむけた子育て支援に取り組んでいる診療所は未だ少なく,意識的取り組みの必要性が示唆された。