著者
松原 まなみ 井上 円
出版者
The Society for Nursing Science and Engineering
雑誌
看護理工学会誌 (ISSN:21884323)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.54-62, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
22

生後3~4日の正期産の健常新生児を対象に,動画解析ソフトを用いて吸啜時の下顎運動と吸啜波を,直接母乳と人工乳首による哺乳の2群間で比較した.下顎運動の指標として吸啜時における顎関節の①吸啜周期,②開口角,③下顎変位量,および④開口・閉口時の加速度を計測した.2群間の比較は対応のないt検定を用いた.A群(完全母乳栄養児)10名,B群(混合栄養児)14名の吸啜周期に有意差はなかったが,開口角,下顎変位量,開口・閉口時の加速度については,いずれもA群のほうがB群とくらべて有意に大きかった.(p<0.001).また,吸啜波はB群よりA群のほうが大きな振幅を示した.開口角,下顎変位量,開口・閉口時の加速度を含む下顎運動は人工乳首の哺乳より直接母乳のほうが有意に大きかったことから,人工哺乳より母乳のほうが吸啜に対してより大きな運動エネルギーを必要とすることが示唆された.
著者
松原 まなみ 仲岡 佳彦 中島 謙二 田村 康夫 吉田 定宏
出版者
小児歯誌
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.201-207, 1996-03-25
参考文献数
16
被引用文献数
2

吸啜時の顎および舌による乳首の圧搾動作の有無と吸引圧の違いによる各種人工乳首使用時の哺乳量の差を明らかにする目的で吸啜ロボットによるシミュレーション実験を行った。その結果,以下の結論を得た。<BR>1)吸引動作による吸引量は乳首によってかなり差があり,さらに圧搾動作が加わると特徴的な差異が認められた。<BR>2)ビーンスターク&reg;は吸引動作のみでは最も吸引量が少なかったが,圧搾動作が加わると吸引量は激増して最高値を示した。他の乳首は圧搾動作の有無による差はほとんどなかった。<BR>3)吸引動作のみ,圧搾動作を伴う場合ともに吸引量の多かったのはビジョン&reg;Mサイズ,ヌーク&reg;S・Mサイズ,チュチュ&reg;,ビジョン&reg;Sサイズの順であった。<BR>4)丸穴乳首は自然流出量が多く,クロスカット乳首では自然流出は認められなかった。
著者
篠原 ひとみ 松原 まなみ 内山 健志
出版者
一般社団法人 日本口蓋裂学会
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.12-21, 2011-04-25
被引用文献数
1

口唇裂・口蓋裂治療チームにおける授乳援助の実態および唇顎口蓋裂児の母乳育児に対する考えを明らかにすることを目的に,日本口蓋裂学会に登録されている全国の口唇裂・口蓋裂手術に携わる324の医療機関にアンケート調査を行った。その結果130施設から回答があり以下のような所見が得られた。<br>1.唇顎口蓋裂児の初診時の直接母乳の割合は,1割以下の施設が約50%であり,裂型に関係なく30%の施設は直接母乳の状態が把握できていなかった。<br>2.ほとんどの施設で授乳指導が行われ,約半数の施設は人工乳首の選択方法や専用乳首の使い方などのビン哺乳の指導だけであった。母乳栄養の指導は48%の施設が行っていた。<br>3.授乳困難時に勧めている乳首は72%がP型乳首で最も多く,次いでヌーク口蓋裂乳首39%,チュチュ口蓋裂用乳首34%であった。<br>4.口唇裂手術直後の授乳方法は35%が術前と同じ方法を行い,それ以外は傷の安静目的に細口哺食器,栄養チューブ,スプーンなどを使用していた。<br>5.唇顎口蓋裂児の直接母乳は82%の施設が「状況により可能」と考え,57%の施設が直接母乳の「援助が必要」と考えていた。<br>6.直接母乳に向けた改善策は,「出生直後からの診療チームのアドバイス」64%,「産科スタッフの授乳ケアの熟知」48%であったが,それを実施するための産院との連携システムがある施設は21%であった。また,直接母乳に向けた「口蓋床の改良」が48%であり,「専用乳首の改良」は33%であった。